コラム

 公開日: 2014-10-18  最終更新日: 2017-02-21

核心を衝く授業~「塾」での「国語」の授業について<教材=安部公房『棒』>

 先日、高1の国語の授業で、こんなことがありました。内容は中間テスト対策、教材は安部公房の『棒』という小説です。生徒は国語の成績が良い男子ですが、『棒』は超現実的な内容であり、どうしても全体の内容が、つかみにくいようでした。

 タイトルに書いた通り、塾での国語の授業の特質は、「核心を衝く」ことにあります。その生徒には、最初に問いを与えました。小説の最後のところで、「この雑踏の中の、何千という子供たちの中には、父親の名を叫んで呼ばなければならない子供がほかに何人いたって不思議ではない。」と書かれている、「何人いたって不思議ではない」子供たちの「父親」とは、どういう「父親」なのかと。

 いくつか正解にたどり着く過程を経たあと、生徒は「核心」に触れました。「裁かないことによって、裁かれる連中……」、つまり「棒」である人々だ、と。

 このあと、さらに補強するやりとり、学校のノートに対する補足説明等もしましたが、60分の授業の終盤、「あと聞きたいこと、確認したいことは?」と聞くと、彼は答えました。「全体がわかったように思います。」

 これが、「塾で国語を教えること」の、端的な例です。もちろん、非常にうまく行った例であり、同じ生徒でも、毎回60分内に「1回完結」できっちり決まるわけではありません(ちなみにこの日の授業は1対1ではなく、もう1人高1の生徒に並行して『城の崎にて』を教えており、そちらは2回完結でした)。

 ただ、今日の記事では次のことを、お伝えしたいのです。塾では週に1時間か2時間、授業をするのがふつうであり、ひとつの作品、教材にかけることのできる時間は、自ずと限られています。その限られた時間の中で、生徒に国語を教えるのには、「核心」もしくは「本質」をいかにわかりやすく教えるか、が要であるということです。

 もちろん、対象の生徒によって手法も異なり、今回『棒』を教えた生徒には上記の方法が最適と判断して、授業を進めました。一人一人の生徒に「わかる」ように教えられることが、塾という少人数の授業で国語を教える醍醐味でもあります。

 ここでひとつ付け加えておきますが、限られた時間の中で「核心」を教えることができるのは、それぞれの生徒が学校ですでにある程度勉強しているからであり、学校の先生方のご尽力があってこそ、こうした授業が成り立つのだということを、つねづね自覚しているものであります。「塾内完結」で小説を教えるのもひとつの理想ですが、それは高1から高2の季節講習で、例えば横光利一の『春は馬車に乗って』などを教えることで実現しています。国語をしっかり勉強したい高校生の方たちには、ぜひ早い時期から言問学舎で勉強して欲しいと、これもつねづね願っております。

 さて、かねてご案内ずみの『国語力.com』における『山月記』の解釈ですが、「読解本篇」と「サポート篇」に分ける形をとっております。「読解本篇」が、今日この記事でお伝えした「核心」であり、「サポート篇」が「補強する」部分にあたります。そのサポート篇の最終回(本年度)、「李徴の『詩』について」は、今夜もしくは明日、アップする予定です。ご期待下さい。

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