コラム

 公開日: 2013-03-22  最終更新日: 2013-03-27

桜の散るのを見て、お子さんたちは何を思われるでしょうか?

 東京ではソメイヨシノ満開の報が流れました。明日、明後日の土・日は、各地ともお花見で大にぎわいになることでしょう。私も教え子が大健闘で和洋九段女子中学校・高等学校に合格したので、同校を見学しながら久しぶりに靖国神社、千鳥ヶ淵の花を見ようなどと計画しています。

 さて、出勤の途上、満開の報に接して、こんなことを考えました。

 『宇治拾遺物語』に、「ゐなかのちご、桜の散るを見て泣くこと」という話があります。
簡単にご紹介すると、こんな話です。

 昔、比叡山で、桜が咲きほこっているところへはげしい風が吹き、そのさまを見てさめざめと泣いている田舎の子どもがいた。それを見た僧がそっとそばにより「どうしてそんなに泣くのか。桜の散るのを惜しんでいるのか。たしかに桜ははかないもので、こんなふうにすぐに散ってしまう。はかないが、それが桜というものなのだよ。」と語りかけた。
 すると子どもは、「桜が散るのは、ことさらどうすることもできません。仕方のないことです。(そんなことではなく)私の父が作っている麦が、この風で花が散って実を結ばなくなると思うと、それが悲しいのです」と答え、さらにしゃくりあげてよよと泣いた。

 『宇治拾遺』は、この話を「うたてしやな」=興ざめなことだ、と結んでいます。

 ところでこの「ゐなかのちご」は、大人びているのでしょうか。それとも、即物的な考えの子どもなのでしょうか。あるいはまだ、情趣を解することのできない年齢なのでしょうか。

 私は、最後の年齢に拠る考えです。すなわち、現在で言えば小学3年生ぐらいまでは、抽象的にものごとをとらえることはできにくく、現実に形のあるものの理解にとどまるのがふつうです。この話で言えば、「麦の花が散って実が入らなくなる」ことがそれにあたります。まだ、桜の花が散ることと、人生の別の感情とを結びつけるだけの年齢に至っていないのだと、考えてみたいのです。

 いつかこのちごも、桜の花が散るのを眺めて胸を痛める時が来るのでしょうか。それとも、やはりそんなことは感じないまま、大人になって一生を過ごすのでしょうか(むろん、それもまたひとつの個性であり、人生でありますが)。

 小学校高学年は、こうした感性、情操の芽がひらく年代です。早くに咲きほこった今年の桜の下で、お子さんたちはどんな思いを持つのでしょうか。語り合い、あるいは何か書き記すということで、感じたものをかたちにすることを、なさってみて下さい。そうした試みが国語力を飛躍的に伸ばすきっかけとなることが、ままあります。また書いたものはずっと記憶に残るので、中学・高校で詩歌などを読む時にも、大いに役立つことでしょう。

 なお、『宇治拾遺』では比叡山が舞台ですが、私はこの話を、愛知県犬山市の犬山成田山の門前の桜に、かさねて見る思いがします。小高い山の上から濃尾平野を見はるかす一帯に散る花は、ゆえ知らずさめざめと泣くちごの姿を、髣髴させるように思えてならないのです。

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