コラム

 公開日: 2013-01-21  最終更新日: 2013-02-01

国語力=読解力を伸ばすポイント<行間を読む>ことについて

 以前のコラムでもお伝えしましたが、国語の「読解力」を上げる方法、あるいは「読解力のある人」の特徴として、「行間を読む」ことが挙げられます。

 すなわち、「行間を読む」ことができるようになる指導がひとつの理想であり、読解力のある人は、おのずから「行間を読む」ことができるわけです。

 では「行間を読む」とは、どういうことでしょうか。字の通りだと、「行と行の間を読む」ということになりますが、もちろんこれは「比喩」ですね。この表現自体が、まさにその意を内包しているわけですが、文字、文章に表立っては書かれていない、書き手の真意やその背景を読みとることです。

 現在言問学舎ホームページ「音読と読解の教材・作品篇」に最新作として公開している『寝たふりをした ちご』(宇治拾遺物語『児のそら寝』)を例として、ご説明します。

『児のそら寝』
 <原文>
 このちご、さだめておどろかさんずらんと、待ちゐたるに、僧の「もの申しさぶらはん。おどろかせたまへ。」といふを、うれしとは思へども、ただ一度にいらへんも、待ちけるかともぞ思ふとて、いま一声呼ばれていらへんと、念じて寝たるほどに、「や、な起こし奉りそ。幼き人は寝入りたまひにけり。」と言ふ声のしければ、あな、わびしと思ひて、いま一度起こせかしと、思ひ寝に聞けば、ひしひしと、ただ食ひに食ふ音のしければ、すべなくて、無期(むご)ののちに、「えい。」といらへたりければ、僧たち笑ふこと限りなし。

 <逐語訳>
 このちごは、きっとおこしてくれるだろうと、待っていると、僧が「もしもし。目をお覚まし下さい。」と言うのを、うれしいとは思ったが、ただ一度で返事をするのも、待っていたかと思われるのでは、と思って、がまんして寝ているうちに、「やあ、お起こし申し上げるでない。幼い人は、すっかり寝ておしまいだよ。」と言う声がしたので、ああ、困ったと思い、いま一度起こしてよ、と思いながら寝て聞いていると、むしゃむしゃと、ただ食べる音ばかりがするので、どうしようもなくて、だいぶ時間がたってから、「はい。」と返事をしたので、僧たちが笑ったことは際限がない。
 
 高校生が古文として学習する場合、省略、簡略化されている部分を自分で補って理解するのが理想ですが、なかなかそれができない生徒もいます。また、小学生や中学生にこの「お話」を読ませるには、工夫が必要です。言問学舎では、この作品を次のような物語として、小学生たちに読ませています。

『寝たふりをした ちご』
 この物語のちごも、そんな気持ちでだれかが声をかけてくれるのを、心待ちにしていました。どれくらいの時間がたっていたのでしょう。
 「もしもし、目をおさまし下さいな。おいしいぼたもちができあがりましたよ。」
 このときちごは、天にも上る思いでした。すぐさま飛び起きようとしたちごの頭の中で、どうしたことかふしぎな声がひびきました。
 『・・・すぐにおきたら、ぼたもちができるのを待ちかまえていたと思われるよお・・・』
 ちごはだれにもわからないように体をちぢめて、すやすやと眠っているふりをしました。すぐに起きたら、ほんとうにぼたもちのできるのを待っていた、幼い子のように見られると思ったからです。でもちごは、ぼたもちが食べたくてしかたなかったので、心の中でいのりました。
 「もう一度起こしてください。もう一度起こして下さい。」
 ところが、ちごの思いをあざわらうかのように、僧たちの中から、こんな声が聞こえました。
 「やあやあ、もうお起こしするでない。幼い人は、すっかり寝ておしまいだよ。」
 この声を聞いて、ちごは泣きたくなってしまいました。
 「ああ、しまった。どうしよう・・・・」
 それでもちごは、しばらくの間がまんして、だれかが呼んでくれないか、と祈る思いでいたのですが、むしゃむしゃむしゃむしゃと、ただひたすらに僧たちの食べる音ばかりが聞こえてきて、いよいよぼたもちがなくなってしまうかと思うと、もうたまらなくなってしまい、ちごを呼んだことをそろそろみんなが忘れそうになった頃、あらんかぎりの声で、
「はーい。」
と叫んだのでした。
 僧たちがおなかをかかえて笑ったのは、言うまでもないことですね。

 <逐語訳>にくらべて、簡潔すぎる部分を補っていることが、おわかりいただけるでしょうか。この文章は小学生に読ませ、感じたことを書かせることが目的ですから、かなり詳しく補足をいれてありますが、ここまで微に入り細を穿つことはしなくとも、年齢や力量にあわせて、生徒が「行間」を読めるよう、的確に導いて行くことが、国語の読解力を育てる有効な方法なのです。

 次回は別の例で、「行間を読む」ことについて、ご案内したいと思います。

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