コラム

2011-12-16

65歳までの再雇用義務化にどう対応する?

 12月14日、厚生労働省は、年金の支給開始年齢引き上げに合わせて60歳以上の雇用を確保するため、65歳まで希望者全員を再雇用するよう企業に義務付け、法改正を経て2013年度から実施する方針を固めたことが報道された。

 現在、年金といえば特別支給の老齢厚生年金の制度が生きており、サラリーマンなどで来年度までに60歳を迎える人は、60歳時点から報酬比例部分を受給し、65歳から本則の老齢厚生年金と老齢基礎年金の2階建ての年金を受給することになる。

 しかし、昭和28年(1953年)4月2日以降に生まれた人は、報酬比例部分が受給できるようになるのが、61歳からになる。そして、これは段階的に64歳までに引き上げられた後、無くなり、65歳から2階建ての受給が始まる。

 したがって、2013年4月2日以降に60歳を迎える人は、そこで雇用が終わると、61歳までの1年間、無収入になる人も出てくることになる。

 一方、65歳までの再雇用義務化といえば、高年齢者雇用安定法により、平成18年4月1日より62歳までとなり、65歳(平成21年度以降に60歳になった人の場合)にまで延長されてきた。この法律の施行時、企業は、定年の定めの廃止、60歳以降の継続雇用制度の採用、定年延長のいずれかの措置を取らなければならないことになり、大多数の企業は継続雇用を選択してきた。

 ただし、この法律では、現在、労使協定によって、定年年齢に達した人のうちから継続雇用される対象者の基準を定めてよいことになっているので、基準に合わなければ採用されないことが起こる。なお、中小企業では平成23年3月31日までは、労使協定締結の努力にもかかわらず調わないときは就業規則で基準を定めてもよいことになっていたので、就業規則での基準の定めの容認⇒労使協定での基準の定め⇒全員雇用の義務化、と全員雇用に向けて進んできたことになる(まだ決定されたわけではないが)。

 確かに、60歳での定年後、61歳になるまで無収入である人が出ることは問題である。しかし、企業側は利益を確保しつつ内部留保も確保して行かなければならないので、全員継続雇用というのは荷が重い場合もある。ローパフォーマンス社員であっても容易には解雇できない日本にあっては、会社が60歳でお引取り願いたい社員も少なからずいる。

 なので、社会保障の整備にあたって、企業側に負担を強いることが多い印象もしないわけではない。経団連も継続雇用の義務化は慎重にやるべきだ、とコメントしているほか、日本商工会議所ではむしろ反対を表明しているようだ。法人税減税の一部停止などもあり、こういうことが重なって行くと事業者の気持ちが、事業所の海外移転に向かって急速に傾いてゆき、雇用創出面で逆効果になることも考えられる。

 希望者全員を65歳まで再雇用するのを義務化するのであれば、助成金の創設など効果の薄い手段を考え出すのではなく、企業を元気づけ、インセンティブを与え、活性化させて産業を盛り立ててゆくような強力な施策を同時に出して行かなければ産業界がさらに停滞してしまう。

 本日の朝日新聞には、再雇用されたが、法定の最低賃金で再雇用され生活にも困っている人の記事がでていた。社員の方も、若いときから60歳以降、別の道に進めるべく能力を磨いて行く武装努力がより一層、必要になってきていると言えるかもしれない。(2011/12/16)


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