コラム

 公開日: 2016-07-06 

冷え性で手が冷えると緊張した時に手が冷たいは、同じ現象なのか?

先日、ある患者さんが、最もお困りの症状が、冷え性であると仰っていました。

冷え性が強い方は、特に手足といった体の末端に冷えを強く感じるわけですが、東洋医学的に判断すると、それは、「上実下虚(じょうじつかきょ)」といい、体の上部に気が上がり、下半身に気が足りない状態をいいます。

「上実下虚」となると、頭痛、肩こり、めまい、耳鳴りといった体の上部に症状が現れ、腰やお腹にも硬さがあり、圧されると痛みがあり、腰や手足は冷えるといったことが多いです。

普通は、このような体の上部に現れる症状を最もお困りの症状とされる患者さんが多く、いろいろとこちらが質問していく内に、冷え性であることが判明したりします。

この患者さんの場合ですが、「冷え性は万病の元」といわれることですので、冷え性を鍼治療で改善しようという心意気にこちらも気合が入る想いがありました。

ところが、話をうかがっていく内に、どうやら普段、冷え性で困っているということよりも、精神的に緊張した場面で、手足が冷たくなって、顔がのぼせてくる、といったことがご本人の深刻な悩みとなっていることがわかってきました。

緊張時になぜ手足が冷たくなったり、顔がのぼせたりするのか

精神状態が緊張状態にあるとき、手足が冷え、顔がのぼせる、といったことは多くの方というより、ほとんどの方に経験があるのではないでしょうか。これは、交感神経と副交感神経からなる自律神経の交感神経の働きによって、手足つまり、体の末端の毛細血管が収縮し、末端の血液量が減少する反応です。

これは、一説によると、緊張状態というのは、例えば昔でいう狩りをするような場合、自分も傷を負う危険があり、もし傷を負った場合に、体の末端の血液量が少なければ出血が少なくて済むという、DNAに刻み込まれた防御反応の一つとされています。

また、緊張時に顔がのぼせる状態というのは、緊張時は何か次に起きたことに瞬時に反応し、判断しなくてはならないので、そのために脳に血液を集めて頭をフルに働かせられるようにする反応だと言われています。

人間の体は、全ての機能をまんべんなく働かせるというより、今集中して働かせなくてはならない機能に血液を集めて、その働きに専念させるという性質があります。

例えば、食事をしたら、胃、小腸、膵臓といった消化器系の臓器に血液は集まり、消化作業を優先させます。食べてから直ぐにお風呂に入るのはやめたほうがいい、といったことがあるかと思いますが、それは、食後の消化器系の臓器に集めた血液が、お風呂に入ることで、全身に巡ってしまい、消化作業に支障がでるためです。

緊張時の手足の冷え、顔ののぼせは正常な反応

要するに、緊張時に手足が冷え、顔がのぼせる、というのは、正常な反応であるということです。ただ、その度合いというか、度が過ぎることになることが問題なのかもしれません。

確かに、緊張しすぎると普段できることができない、といったことはあるかと思いますが、緊張することが悪、とばかりは言えないと私は思えます。

なぜなら、自分の持っている能力を発揮するには緊張感が必要だと思うからです。また、緊張している、ということは、真剣である、という表れであると思います。一生懸命に本気で取り組んでいるから緊張するのであって、それに良い評価をする人も世の中にはいると思います。

緊張を和らげる対策として、緊張している自分を外から眺めるように客観的に見るようにするとか、必要以上に自分をよく見せないように、ありのままの自分を評価してもらうように考え方を変えるなど、いろいろとテクニックはあるのかもしれません。それは、ご本人が経験を積まれて体得していくものかと思います。

体質的な冷え性と緊張時の手足の冷えは別物

私が言いたかったことは、緊張時の手足の冷え、顔ののぼせ、といった現象は、いわゆる一般的な体質的な冷え性、顔がのぼせる、といった症状とは異なる現象であるということです。

体質的な冷え性、顔ののぼせというのは、精神状態がどうであれ、基本的に常に体が冷え、顔がのぼせる、といった状態であり、これは、血液循環、気の循環といった体内の流れが悪いことや女性の中高齢者にみられる年齢によるホルモンの分泌低下といったことが原因になっています。

従って、「緊張する場面になったら、自分は冷え性になってしまった。」というのは間違いです。

冷え性は体質的な症状であり、緊張時の手足の冷えは人間ならば誰でもある生理的(病的の反対)現象なので、それらを同じには考えるべきではないと思います。

鍼治療に何ができるか?

鍼治療では、「上実下虚」に対して、体の上部の硬さを緩め、下半身、特に腰部に力をつける、ということにより、冷え性や顔ののぼせを改善することは可能です。

ただし、特に冷え性というのは、体質的なものであり、昨日まで冷え性で今日から冷え性ではない、とは言いづらく、冷え性が改善、消失したことに気付くまでも時間がかかると言えます。

患者さんの中には、「今までは特に冬場に手足の冷えを強く感じていたが、今年の冬はほとんど感じなくなりました!」といった例がありますが、このように、冬のシーズンを越してみないと冷え性が改善したかどうか、自覚しにくい、といったことがあります。

冷え性は白黒と決め付けるというより、グレーゾーンがあり、徐々に改善したり、冷えを強く感じたりといったことを繰り返しながら、ある一定のスパンで、改善したかどうか判断できるものです。

緊張時にも「上実下虚」の状態が強まることで、手足が冷え、顔がのぼせる、といった状態になると考えることもできますが、緊張時の手足の冷え、顔ののぼせは、異常ではなく、ノーマルな反応ですので、鍼治療で解決するということは考えにくいです。

確かに、普段の冷え性を鍼治療によって改善できれば、緊張時の手足の冷えが以前ほどの冷えではなくなる、といったことは起こりえることかもしれませんが、鍼治療を続けていけば、緊張時に、「全く手足が冷たくならないし、顔ものぼせない、普段通りに人前でも話ができるようになって、最高の気分です!」ということにはならないと私は思います。

体質的な冷え性、顔ののぼせを改善するためならば、鍼治療は有効でありますが、緊張時の手足の冷え、顔ののぼせ、それによる問題を解決するのに鍼治療が有効かどうかは断言できないと私は思います。

緊張時の手足の冷え

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