コラム

 公開日: 2016-06-28  最終更新日: 2016-07-06

治療例の紹介 ハムストリング(太ももの裏)痛

ハムストリングとは、太ももの裏の筋肉の総称で、一般的には肉離れを起こしやすいとされます。

この患者さんは、当院に通院される前は、ハムストリング痛を何度も再発されていましたが、再発しない体作りとして根本原因に対して、いかに治療できるかがテーマとなります。

性別

男性

年齢

30歳代

最もお困りの症状

ハムストリング(太ももの裏)痛

その他の症状

肩こり

初診時の症状、体質

2014年5月に初めて右ハムストリングを痛め、一度は痛みがなくなるが、2014年12月に再発する。股関節を伸ばすと痛む。

右ハムストリングをかばって歩いているせいか、腰がつらくなってくることがある。立ちっぱなしの状態が長時間に及ぶと腰がつらく感じる。

左のハムストリングや左右の膝や下肢が痛むことはない。

整形外科で診察を受けるも異常はないと言われた。

他の鍼灸院で治療を受けたことはあるが、その時は、太ももの裏にのみ鍼をして、直後にかなり痛みがでたが、翌日に軽くなった、ということがあった。

パソコン上の仕事が続くと肩こりがあり、特に右肩はつらさがある。

診察

ハムストリングとは、太ももの裏にある大腿二頭筋、半膜様筋、半腱様筋の3つの筋肉の総称です。

この患者さんの右ハムストリングを触診すると、左足とは異なる硬さや張りが右ハムストリングの中央とやや内側の縦に走るライン上に触れました。

ご本人は、右太もものハムストリングの痛みのみを主に訴えられ、確かに触診としても右のハムストリングには問題がみられますが、このハムストリングの硬さや張りというのは結果であり、その結果をもたらした原因をつきとめ、原因に対して鍼ができなければ、痛みの改善そして予防もできないのではないかと考えました。

それには体全体をみながら、体全体がどのように負担がかかり、その結果、右ハムストリングに症状がでているのかを探る必要があります。

体全体をみていくと、この患者さんの場合、肩は右、背中は左、腰と骨盤は右、というジグザグな形で硬さや筋肉の盛り上がりがみられました。その左右差による負担が右のハムストリングに最終的にしわ寄せとして現れている印象でした。

ハムストリング痛の治療ポイント1
ハムストリング痛の治療ポイント2

治療内容

診察の欄で述べたように、この患者さんはご本人の自覚症状としては、右の太ももの裏のハムストリングが痛むということしかありませんでしたが、体全体のバランスが欠けていることから、右肩部、背中の左側、右腰腰部を固めてなんとかバランスを保とうと無理をしていて、それが最終的に右ハムストリングに負担がかかり、右ハムストリングを痛めていた、という結果になっている、と私は判断しました。

実際の60分の治療の前半の30分は、右肩部、背中は左第9胸椎、右第5腰椎の硬さを緩め、筋肉の緊張をとれるように鍼をし、後半の30分は、右太ももの裏のハムストリングの中央のラインとやや内側のライン上にみられる硬さに対して、深めの鍼をし、右ハムストリングを芯から緩められるような治療を行ないました。また、バランスをとるために、左のハムストリングにも鍼をすることも必要でした。

経過

初診時から数回の治療では、どうしても右ハムストリングの痛みをとることを最優先としたため、右ハムストリングに鍼をして緩めることが中心でした。

そのころは、鍼をした直後やその後、数日間は右ハムストリングの痛みがとれたり、右足が軽く感じられたりということがありましたが、少し歩く時間が長かったり、立ちっぱなしの時間が長いと、痛みや違和感が直ぐに現れることが続きました。

初診から2ヶ月が経ったころには、右ハムストリングの痛みはなくなりましたが、ウォーキングなどの運動をすると、運動後にストレッチをすると左右差があり、違和感が残るという状態になりました。

私としては、その頃から、治療方針を右ハムストリング中心の治療から、第9胸椎と第5腰椎・仙骨部(骨盤中央)を重視する治療に切り替えていきました。右ハムストリングの痛みがほぼなくなったことと、治療の回数を重ねていく内に、この患者さんの根本的なお体の歪みの原因が仙骨部にあることに気付いたからです。

それから3ヶ月後には、右ハムストリングの痛みを訴えることはなくなり、ジョギングといった今までよりも負荷のかかる運動をされても特に問題はなくなっていきました。

その頃、私としては、治療間隔を空けていくことも提案しましたが、ご本人としては、右ハムストリングの痛みを再発させたくない、という気持ちが強く、それからしばらくも週1回もペースで通院されていました。現在は、ハムストリングのためよりも、お体全体のメンテナンスを目的とされ、月に1回のペースとなりました。

現在は週に3日ほど、早朝に8kmほどジョギングされているようですが、右ハムストリング痛の再発もなく、ご本人としても体調が鍼治療を始める前よりかなり良くなったと仰っていました。

治療期間: 1年3ヶ月
右ハムストリング痛がなくなるまで…初診から2ヶ月
右ハムストリングに違和感や左右差がなくなるまで…初診から5ヶ月

治療間隔: 最初の5ヶ月は週1~2回、その後は徐々に治療間隔を空け、週1回、隔週に1回となり、現在は月に1回。

患者さんご自身が感じられた変化

以前に他の鍼灸整骨院で鍼を受けましたが、そこでは痛みのある個所のみに鍼をしてもらい、それでも効果は感じましたが、その効果が持続せず、また再発するといったことを繰り返していました。

こちらの治療院では、まず痛みのある個所をじっくり診てもらえることに安心できましたが、それに加え、私の右ハムストリング痛の根本原因を探り、それに対する治療も同時に行なってもらえたことで、ハムストリング痛の再発は今のところありません。

根本原因を解決できなければ再発の危険性は常につきまどうと思いますので、その点も本当に有難く思います。

そして、これは治療を開始した当初はよくわかりませんでしたが、治療が進むにつれ、普段の生活の中で自分の体調の調子良さに気付き、驚きました。こちらで鍼を受ける前と比べて、よく眠れ、便通も良く、食事がおいしく感じられる、また同じ仕事量でも疲れが残らず、回復が早いと感じています。

考察

この患者さんのように、痛みが右ハムストリングに限る方は珍しいのですが、体全体をとらえながら、お体をみさせていただくと、体の負担のかかり方や体の癖といった、より根本的なものがみえてきます。

この患者さんの場合は、右肩部、背中は左第9胸椎、腰部は右第5腰椎、仙骨部というように、背骨を中心にジグザグに体に負担がかかっていて、それが最終的に右ハムストリングに痛みとして現れていたといえました。

鍼は打った所に、血液や気といったものを集め、痛めた筋肉や組織の修復を早める作用がありますので、この患者さんのように傷ついた右ハムストリングの修復を早めるためにも痛めている個所に鍼をすることは重要なことです。

ただし、それだけでは根本の治療とはならず、たとえ右ハムストリングが回復したとしても、また負担が溜まりきれば痛みが再発することは想像できます。実際にこの患者さんは当院に来られるまでは再発を繰り返していました。

この患者さんの場合、根本治療としては、右肩部、背中は左第9胸椎、腰は右第5腰椎、そして仙骨部といった硬さや筋肉の盛り上がりに対して、鍼で緩め、左右差がないバランスの良い状態を目標とする必要がありました。

徐々に、上記の中でも特に仙骨部が緩みだしたタイミングで、右ハムストリングの痛みや違和感、左右差といったものが消失していき、ジョギングのような運動をされても再発することはありませんでした。

また、体全体のバランスが整ってきたことで、体調面でも良い結果がでたこともあり、ご本人も大変驚かれていました。

この患者さんには、症状や痛みのある個所の根本原因を探り、その原因を突き止めて、その原因に対して有効な鍼をすることが完治するということにつながるという大切なことを学ばせていただきました。

この記事を書いたプロ

鍼灸院 鍼 神尾(はり かんお) [ホームページ]

はり師 神尾理

東京都豊島区高田1-40-10 グランヴァン目白ヒルズ801 [地図]
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