コラム

 公開日: 2012-05-18  最終更新日: 2015-03-20

「湾岸タワーマンション」は「首都直下地震」が起きても安心か?

東京は(島部を除き)、関東大震災以来、90年近く、「震度6」以上の揺れを経験していません。
この期間に高度経済成長を遂げ、首都機能の一極集中が進みました。

競うように建物の高さは、どんどん高くなり、繁栄を象徴するかのように超高層建物は増え続けました。気付いてみれば、海のギリギリ寸前のところまで超高層建物が建っている光景に驚かされる方も多いことと思います。

ところが、今、「マグニチュード7級の首都直下型地震が発生する確率は4年以内に70%」と、東京大学地震研究所、平田教授らの研究結果による発表が、東京と周辺の人々を恐がらせています。今まで政府の地震調査研究推進本部では発生確率が「30年以内に70%」であったのですが、東日本大震災によって、地震の発生リスクが大幅に高まってしまったということになります。

ところで、「湾岸タワーマンション」が建つ土地は、一般的に大地震が起きたときに被害が大きいとされる「川に挟まれた場所」や「谷底低地」、また、かつて「沼や池」だったところでもない、ずばり、かつて「海」だった場所です。

自然的には海であったところを人間が埋め立て、宅地化し、そこに「超高層」という、今まで長い間、人が住まいとして暮らしていた高さをはるかに超える高さの建物を建てて住んでいるわけです。

この湾岸タワーマンションは、もし、首都直下地震が起きたときは、どうなってしまうのでしょうか?

よく、デペロッパーなどの売り手は「杭を100m近く打ってあるから安心です」といった説明をしますが、それはあくまでも計算上、机上で問題がないというだけで、実は未だ東京は「震度6以上」の揺れでこれだけ深い杭を打ち込んだマンションにどれだけの負荷がかかるのかは経験していないため、「未確認」なのです。計算の前提になっている以外の地震がこないと言い切れないため、誰も100%大丈夫とは言えません。「自然の猛威」がすべて人間の計算、想定通りにいかないことは、東日本大震災や他の様々な災害で周知の通りです。

最近は揺れを軽減する免震構造のマンションも増えていますが、この、衝撃を吸収する装置を取り付けた免震工法は、敷地に対して、あれだけの高さと重さがある建物をゴムなどの衝撃吸収装置の上に乗せているようなものですので、突き上げが想像以上に強い縦揺れが起きたらどうなるのか?想定以上の大きさの横揺れが起きたらどうなってしまうのか?など、人間の頭脳やコンピューターのシュミレーション上では大丈夫であっても、実際の大地震を経験していませんので、どんなに「最新技術を駆使した建物ですから大丈夫です」と言われても不安が残ります。逆に免震装置の影響で、風で揺れるとか、軽い揺れは免れるがある震度を超えると逆に不自然な変な揺れ方をしたり、余震で船酔いのような症状になったりといった声も聞こえてきて、未だ免震工法の歴史は浅いことと、東京での震度6以上の経験がないことから、やはり100%安心とは言えないと思われます。

ところで、一般的に、埋立地は地盤が弱く、地震の際には被害が大きくなると言われていますが、同じ埋立地でも埋め立てられてからの「経過年数」と、「埋め立てに使われている材料」によって、安全度は異なり、古い時代に埋め立てられた土地の方が、新しい埋立地より、地盤は安定すると言われています。

東京湾の埋立地は、徳川家康が江戸に入った直後、「丸ノ内から八重洲」辺りからはじまり、明治・大正時代の「月島・勝どき」、昭和に入り、戦前の「晴海・豊洲」、戦後の「有明・品川埠頭」と次々埋め立てられ、例えば最近の埋立地である「葛西」と古い埋立地とでは約400年の差があると言われています。

震源が東京から離れた場所の「東日本大震災」でも、「浦安」に大きな液状化被害が出たことは有名ですが、都内でも「有明」など一部で液状化などが報告されています。いずれも比較的新しい埋立地です。

また、埋め立ての材料は「家庭廃棄物(ゴミ)」と「土」に分かれ、当然、「土」の方がいいのですが、土にも「粘性土」と「砂質土」、「両方の混在」があり、やはり、粘性の土が一番液状化しにくく、砂質土が最も液状化の可能性があるといわれています。

「東日本大震災」で、東京湾の埋立地では例えば葛西など新しい埋め立てエリアであっても液状化の被害が聞かれなかったのは、葛西の土地が建設残土などの粘性土が多かったためと言われていますが、「埋立地」のマンションを検討する場合、「経過年数」だけではなく、「埋め立てに使われている材料」も調べられる範囲で調べてみることをおすすめします。

また、昨年の東日本大震災以降、湾岸タワーマンションなどの新規分譲マンションは売り手各社が競うほど、防災対策のスペックを大幅に見直し、耐震性、防災対策の面では、現在、最先端をいっていると言われますが、地震が来るときは、常に自宅にいるとは限らず、自宅が埋立地にある場合、保育園、小学校、診療所、スーパー、公園などの日常生活コミュニュティーも埋立地上に形成されやすく、それらの場所で被災してしまった場合は、自宅マンションの最新防災設備も意味をなさないかもしれません。液状化により土地が不同沈下するところとしないところに高低差が生まれ、、水道管やガス管、下水道管などのライフライン機能が壊れてしまう可能性があります。トイレが使えなくなり、自家発電装置で当初動いていたエレベーターも数日で止まってしまう可能性もありますし、本震並の大きさの余震が何度も続き、「高層難民」の可能性もあります。

ちなみに勝どき、晴海、月島などの湾岸部を擁す東京都中央区によれば、高層住宅におけるライフラインの復旧見通しを水道の断水率は約1ヶ月、下水道支障率(トイレが流れない等)は約1ヶ月、電気は約1週間、ガスは約2ヶ月弱としています。

時々、湾岸エリアの高層マンションの建物の下を歩いているときに発生する強いビル風を受けると、もし首都直下型地震が起きたら、この辺の超高層マンションはどうなってしまうのだろう?と考えさせられる時があるのですが、万が一、火災旋風が起きて超高層マンションを襲った場合、ビル風に煽られて燃え上がった火災旋風の高熱(鉄の沸点をも超えるとされる超高温の炎の竜巻や旋風)が、場合によっては高層階住民のいる住戸のガラス窓を焼き切り、住戸内に入ってくることも考えられるのではとも思われ、その光景は想像するに耐えられないほどの恐怖を感じます。

また、タワーマンション周辺の低層建物は杭を地中深く打ったり、免震工事がされているとは限りませんので、液状化による低層建物の倒壊も懸念されます。

さらに超高層建物に巨大揺れを引き起こす「長周期地震動」の恐れや、窓ガラス・壁面タイルなどの「落下物などの恐怖」に加え、東京湾周辺のコンビナート地区の「石油タンクの火災」、「液化天然ガス(LNG)などの大型タンクでの大規模火災」、「原油などの東京湾の拡散」なども心配されます。

実は、長周期地震動は、超高層マンションだけではなく東京湾岸にたくさんある石油コンビナートにもタンク内の石油の液面が大きく波打つ「スロッシング現象」を発生させ、約12万キロリットルの石油があふれ出す可能性があることがわかっています。液面に浮かせた屋根ぶたがタンクの壁と接触し、火災が起きる恐れもあると言います。2003年9月の十勝沖地震では北海道苫小牧市のコンビナートにあった浮き屋根式タンク火災が起きました。早稲田大学の浜田教授(地震防災工学)は東京湾岸部でも同時多発式に火災が起きる可能性があると指摘しています。

そして、やっぱり湾岸は「津波」も心配です。
これまで東京湾では津波が発生する可能性は少ないと言われていましたが、東日本大震災では晴海で1.3m、横浜で1.6m、木更津で2.83mの津波が襲いました。
これから起きるとされる首都直下地震による東京の被害想定によれば、東京都中央区で最大2.51m、港区で最大2.47m、品川区で最大2.61mの津波が発生すると予想されています。また、川崎市は最大3.7m、横浜市は最大4.9mです。(東京湾を出て相模湾になると更に被害は大きくなり、藤沢市は最大10.7m、鎌倉市は最大14.5mと予想されています。)

湾岸の埋立地に、シュミレーション上では安全に建てられていたはずの超高層マンションは自然の猛威にさらされた場合、実際の震度6以上の揺れを経験したことがない以上、「来たるべき本番」をむかえたら、実験台になってしまう可能性が全くないとは言えないと思われます。想定内であるならまだしも、想定外が起きたら...

やはり、「安全性」という視点から見ると、かつて海だった埋立地の超高層マンションより、揺れが少なく液状化の心配もない、歴史的に地盤の安定した場所に建つ「低層マンション」の方が、長周期地震動に対する問題もなく、安心と言えるのではないでしょうか。

ただし、地盤のよい内陸部であっても、倒壊や火災が不安視される木造住宅密集エリアなどを避けなければならないことは言うまでもありません。
(不動産コンサルタント 後藤 一仁)


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