コラム

 公開日: 2012-04-06  最終更新日: 2016-05-21

地震被害による賃貸マンションの修繕費用負担は、貸主?それとも借主?

東日本大震災の後、首都圏でも、賃貸アパートや賃貸マンションの玄関ドア、建具、内装、設備などに被害が生じ、修理の必要が生じた場合などに、その費用を貸主が負担するのか、借主が負担するのか、揉めるケースがありました。

私のもとにも、賃貸マンションの高層階に暮らしている入居者から、地震があった日にようやく帰宅して、玄関ドアを開けたとたんに水が住戸内からあふれ出てきて(地震で高置水槽が倒れ)部屋中が水浸しになり生活できず、しばらくの間ホテル住まいを余儀なくされたのですが、その修復費用やホテル費用を貸主借主どちらが負担するのかで揉めていると相談があったケースや、地震で冷蔵庫が倒れ、その上に設置していた電子レンジが落ちる際に、フィッシュグリルの取手にぶつかりグリルが破損して使えなくなってしまった上、床に落ちる際の衝撃でフローリングに剔れ傷が出来てしまったが、その修復費用をどちらが負担するのか揉めているケースなど、たくさんの相談が寄せられました。

このような、地震による賃貸アパート・賃貸マンションの被害は、貸主、借主、どちらの責任でもありません。しかし、賃借人の責任ではないことが原因で賃貸住宅に被害を受け、修理の義務が生じた時は、貸主は民法606条の修繕義務に基づいて、貸主の負担で修理をしなければならないことになっています。

貸主の方々の「地震はどちらの責任でもなく、不可抗力の被害だから、貸主には責任はない」と主張したい気持ちはとてもわかりますが、主張しても貸主の修繕義務が免除されることは恐らくありません。

建物の所有者である貸主も地震による被害を受けた被害者であるのですが、貸主には、民法601条にて、所有している賃貸物件を借主が通常の使用が出来るように修復する義務があります。

貸主は、もし、借主から「部屋が使用できない状況なので家賃を減額してほしい」といった申し出があった場合なども、借主が賃貸住宅を使用できない部分の割合に応じて(例えば、一部屋分とバスルームと洗面台部分が使えない等)、修復が完了するまでの期間の賃料の減額に応じるなど、地震を通じての借主との無用な争いは回避するようにし、もっと前向きなことにエネルギーを投入した方が、賢いかもしれません。

また、地震により、家具などが転倒したり、電気製品などが落下し、壁クロスや床のフローリングに剔れ傷などの損傷が生じた時の原状回復費の負担についても、貸主が、借主に、例えばしっかりと家具の転倒防止策を講じていないことなどを理由に、物件の傷などの損害賠償を請求するといったケースがありますが、その場合でも、そのことを理由に、借主から損害賠償を取ることは(立証が困難であることから)難しいと思われます。

地震による家具などの転倒は、借主の責任によるものではなく、地震によるものなので、たとえ、フローリングやクロスに傷がついたとしても、借主は、貸主に対する賠償義務を負わないのが原則です。

しかし、一方で、地震発生から何年も過ぎて、物件を退出される時になって、退室時の損傷チェックの立会時などに、床や壁の微妙な傷を借主が、「あっ、これは地震の時の傷です。これも地震の時の傷です。これもです。」などと、もしかしたら、本当は地震の時についた傷ではなく、借主の故意(わざと)又は過失(不注意)による傷を地震による被害のせいにして、自らの過失の負担から免れようとするケースや、借主自身も忘れてしまっている傷を自ら地震時の被害かと思ってしまっているケースもありますので、注意が必要です。

通常、一般的な賃貸借契約書には、「物件内に破損箇所が生じたときは借主は貸主に速やかに申し出て、確認を得るものとし、その届け出が遅れて貸主に損害が生じた時は借主は、これを賠償する」などといった条項が入っているケースが多く、借主は、地震後に被害を発見した時は放置するのではなく、すみやかに貸主に報告しなければなりません。

しかし、借主は一般消費者ですから、悪意がなくても、忙しいなどの理由で、なかなか報告してこない場合もありますし、報告することを認識していない場合もありますので、事業者である貸主の側から、地震の後などに、借主に「被害はございませんでしたか?」と伺いをたてるなり、「地震から一年が経ちましたが昨年の東日本大震災による被害はございませんでしたでしょうか?」などと、お伺いを立てるなど、できれば積極的に借主にアプローチをし、地震による被害状況を把握し、「地震被害箇所」と「通常の入居者の故意・過失による損傷の箇所」をしっかり区分けし、対応を考えていくことが必要だと思います。

また、借主も、地震が起きた後は、地震による、建物や住戸内の損傷を見つけたら、なるべく早く、貸主や管理会社へ報告して確認してもらうようにし、いらぬ疑いはかけられないように働きかけ、大家さんも地震の被害者なんだという認識をもって、協力して、修繕、解決するべく努力していただければと思います。

不動産コンサルタント 後藤 一仁


■「資産価値が落ちない、安全な家(戸建・マンション)を買うために、必読の1冊! 『東京で家を買うなら』 ~人生が変わる!戦略的『家』購入バイブル~ → http://www.amazon.co.jp/dp/4426118581/

この記事を書いたプロ

株式会社フェスタコーポレーション [ホームページ]

不動産コンサルタント 後藤一仁

東京都中央区銀座7-13-6 [地図]
TEL:03-5911-7200

  • 問い合わせ

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

32

こちらの関連するコラムもお読みください。

<< 前のコラム 次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
お客様の声
セミナーアンケートより一部をご紹介

銀座(@銀座おとな塾〔SANKEI GAKUEN〕)で開催させていただきました「家を買う前に必ず聴いておいてほしい『賢いマンション購入法』セミナー」は、有料セミナーにもかか...

本(著書)
東京で家を買うなら カバーデザイン

『東京で家を買うなら』 http://www.amazon.co.jp/dp/4426118581/ 後藤 一仁(著)  定価 本体\1,500+税 家の買い方は全国どこでも同じではありません。東京...

 
このプロの紹介記事
不動産コンサルタント 後藤一仁さん

「顧客満足」を超えた「顧客感動」でファンを増やす(1/3)

 不動産物件を探す場合はインターネットの検索サイトや情報誌などさまざまな手段がありますが、初めての不動産取引には不安がつきものです。そんな不安を解消してくれるのが、東京を中心に不動産の「買う・売る・借りる・貸す」を一般個人の方むけにわかりや...

後藤一仁プロに相談してみよう!

朝日新聞 マイベストプロ

28年の経験を活かし、不動産を通じてあなたを幸せにします!

会社名 : 株式会社フェスタコーポレーション
住所 : 東京都中央区銀座7-13-6 [地図]
TEL : 03-5911-7200

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

03-5911-7200

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

後藤一仁(ごとうかずひと)

株式会社フェスタコーポレーション

アクセスマップ

このプロにメールで問い合わせる
プロのおすすめコラム
マイナス金利、マンション購入者にとってのメリットとデメリット。
イメージ

 住宅ローン金利は、軒並み過去最低水準 日本銀行が、金利を低く誘導することで景気を回復させ、デフレからの...

[ マンション購入と住宅ローン ]

【 フジテレビ 『ノンストップ!』 スタジオ生出演情報】
イメージ

20日のフジテレビ情報エンターテイメント番組『ノンストップ!』(午前9:50~11:25)http://www.fujitv.co.jp/nons...

[ テレビ出演情報 ]

『東京で家を買うなら』重版決定!! 感謝を込めて書籍プレゼント!
イメージ

  『東京で家を買うなら』 が、紀伊國屋書店渋谷店 『総合1位』、アマゾンベストセラー『1位』(家選び)などを獲...

[ 書籍『東京で家を買うなら』 ]

首都直下地震! 家を買ってしまってからでは遅すぎる! 東京の危ない場所とは? 

東京にマンションや一戸建てを購入したいと思っているけど、買って、数千万円の住宅ローンを背負ってしまって、本...

山手線 「最も標高の高い駅、低い駅」
イメージ

普段、何気なく乗っている山手線。車内を見渡してみると、一人で乗っている人もスマホなどを見ているか、目を閉...

[ 東京の地形・地盤・標高・海抜・地震安全性 ]

コラム一覧を見る

スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ