コラム

 公開日: 2016-07-16 

選択制確定拠出年金のデメリット・・・本当のところ

自らの給与の中から確定拠出年金の掛金を拠出する「選択制」確定拠出年金に関してとても良い記事が出ていますのでシェアさせていただきますね

著名な井戸美枝先生のコラムです 確定拠出年金は「選択型」にご注意を!


選択制確定拠出年金とは?



最近本当に増えてきている「選択制」

企業の福利厚生として、確定給付企業年金の更なる上乗せとして導入している企業もありますし、企業拠出をするだけの体力もない、あるいは従来の企業拠出に人事戦略的に魅力を感じない(どうしても年功序列的な掛金設定になってしまいがちですから)という経営者さんの理念などにより選ばれているのが「選択制」です

でも井戸先生のご指摘の通り、選択制にはいわゆる企業拠出(会社が掛金を負担する従来型の企業型確定拠出年金)を受けている企業型確定拠出年金にはないデメリットがあります

今回は選択制確定拠出年金のデメリットの計算方法をご紹介していきます

企業が掛金を拠出してくれた場合、給与とは別に会社が老後資金を準備してくれているので、社員にとってはこれが一番うれしいことです

これだと、単純に資産の増加でなんのデメリットもありません

※現実問題、こんなありがたい制度にもかかわらず、60歳まで下ろせないことや自分自身で運用責任を負わなければならないことに不満を抱く人も多くいます



一方で、「選択制」は制度運営にかかる費用は会社が負担しますが、掛金は会社が出しません

選択制は「給与減額方式」などといわれることもありますが、今受け取っている給与の中から、加入者自らの意思で掛金を拠出します

財形貯蓄制度をイメージしていただくと近いと思います

要は給与の内訳を「今受け取る」か「将来の積立に回すか」選択するのが「選択制」です



選択すると社会保険料が減る



給与の中から掛金を拠出するのでそのお金は社会保険料の計算には含まれなくなります

なぜならば、その掛金は「今使えない」お金なので、算定対象とはならないのです



社会保険料の計算に含まれないということは、その分毎月の社会保険料が安くなるということです

健康保険料、介護保険料、雇用保険料、厚生年金保険料です

給与40万円の東京都在住の40歳会社員であれば、1か月の保険料は以下の通りとなります(平成28年7月現在)

健康保険料(介護保険料含む)23,657円

雇用保険料          1,600円

厚生年金保険料       36.547円

合計               61,804円



この方が選択制で将来に向けての積立を月3万円したとしましょう

この3万円は社会保険料の計算に含まれませんから実質給与37万円となります

その場合の負担する保険料は以下となります

健康保険料(介護保険料含む)21,926円

雇用保険料              1,440円

厚生年金保険料           33,873円

合計                  57,239円

つまり1か月の社会保険料が4,565円も安くなるのです

もちろんこれに加え所得税、住民税もかかりませんから「選択制」は加入者にとってもものすごく「お得」な制度なのです

当然、同じ額だけ(雇用保険のみは企業負担が多いです)会社も社会保険料を払わずに済むわけですから、経営者サイドから見ても「選択制」が注目されるわけです



でも、井戸先生のご指摘は、社会保険料が減るということは給付も減るから気を付けて!というところなのです

とても大事なことなので、検証しましょう



健康保険給付の減額



健康保険で負担する保険料が減ることにより給付が減額するものは2つあります

出産手当金と傷病手当金です

出産手当金は産前・産後の98日間について、給与日額の約3分の2が支給される制度です

傷病手当金は病気やけがで長期間働けない状態が続いた時に同じく給与日額の約3分の2が最長で1年半支給される制度です



例えば月3万円の「選択制」確定拠出年金により実際に減額される給付はどのくらいなのでしょうか?

出産手当金、傷病手当金ともに以下のように計算します

1か月の掛金 ÷ 30日 x 2/3

例えば掛金3万円なら、 30,000円÷30x2=666円

つまり1日あたりの出産手当金、傷病手当金がそれぞれ666円少なくなってしまうということです

※2016年4月から直近12か月の平均の日額になりましたが、ここではそこまでの説明は割愛しますね



出産手当金は予定日通りの出産であれば98日間の支給ですから、666円x98日=65,268円受給額が減りますね

また、180日間傷病手当を受け取るとすれば、本来もらうはずだった金額より約12万円ほど給付が薄くなってしまいます

万が一病気になった時に日額666円の不利益を被ることを良く思わない方は掛金を拠出しないという「選択」もできますし、等級が変わらない程度の拠出額で抑えるという「選択」もできます

※社会保険料は原則標準報酬月額を等級にならして計算されるので、掛金の拠出がある一定の範囲内であれば保険料も減りませんし、給付も減りません



介護保険給付の減額



介護保険は、保険料の支払い額が減額されることで被る不利益は一切ありません

※あるとすれば、所得に応じてサービスを受けた場合の自己負担が1割か2割かの分かれ目です



雇用保険給付の減額



雇用保険はどうでしょう?

基本手当(いわゆる失業手当)は賃金の40~60%です

3万円の掛金を拠出したことによる基本手当の減額は以下のように計算が可能です(給付率を50%とした場合 年齢や勤続年数によりこの率は変動します)



1か月の掛金 ÷ 30日 X 50%(ただし上限あり)

例えば掛金3万円なら、30,000円÷30x50%=5,000円

これは40歳の基本手当の上限7,105円を上回りませんので、全額受け取れる計算となります

仮に失業期間を100日とすると、掛金を拠出したことにより失業手当が50万円減額されることになります

転職をすぐにと予定している人は選択制での掛金拠出を今すぐにする必要はないということです

基本手当をもらった方がきっと得でしょうから・・・

※基本手当を受給するまでには7日間の待期期間と3か月間の給付制限があります(離職理由による)





介護休業給付は給与日額の40%の給付ですから、これも影響受けますね

月3万円の拠出であれば、一日あたり400円です



育児休業を取得を予定している場合は、掛金を拠出しない方がベターかもしれません

なぜなら、育休を1年とるとすると最初の半年は給与日額の67%の給付、そのあとは50%の給付です

期間も長いので、結構な金額の差になります

30,000÷30x67%=670円 → 180日取得すると仮定すると120,600円

30,000÷30x50%=500円 → 180日取得すると仮定すると90,000円

※女性が取得する場合は、出産手当金の受給終了後からの育休ですから日数が上記より短くなります



また復職後時短をするなどといった場合、実際の給与額は下がるのですが社会保険料算出の等級はは出産前の等級のまま計算されるのである程度長期にわたり時短を受ける場合、確定拠出年金の掛金を拠出するより社会保険の将来の給付(具体的には老齢厚生年金)を重視した方が良いかもしれません



老齢厚生年金給付の減額



では年金はどうでしょう?

影響を受けるのは厚生年金だけですから、将来受け取る老齢厚生年金が、「選択制」を利用したことでいくら損をするのでしょうか?



これは、次の計算式で明らかになります

毎月の掛金 x 5.481÷1000x掛金拠出月数



例えば月3万円の確定拠出年金を40歳の方が60歳まで20年継続すると

3万円x5.481÷1000x240ヶ月=39,463円

65歳から受け取る老齢厚生年金が年間39,463円減ってしまうということになります



このほか、遺族年金でいえば、上記で計算した金額の75%が減額です

ご主人が確定拠出年金を選択制でしていると、亡くなった時に奥さんがもらえる遺族厚生年金が年間約3万円弱減ってしまうという状態になります



また年金は障害年金という給付もあり障害1級であれば、損失は年間39,463円の125%です



自らが選択できることが最も大切なメリット



このように社会保険は万が一のセーフティネットですから、確定拠出年金の掛金を給与の中から拠出する「選択」をすることにより、確かに不利益を被ります

これは事実です

しかし問題は、その不利益の大きさです



前述した減額される給付の中で、ほぼ加入者すべてに関わるであろう不利益は老齢厚生年金の減額です

65歳から90歳まで老齢厚生年金を受け取るとすれば年間39,463円の不利益ですから合計986,580円ほどそもそも予定されていた金額よりも老後資金が少なくなるということです



一方月3万円の掛金を20年拠出すると720万円のお金を貯める事ができます

3%で運用できれば20年後約930万円の自分年金を60歳で受け取ることができます

しかも一時金で受け取る場合、930万円のうち800万円は非課税で受け取り残りの半分約65万円が課税対象です(退職所得控除)

ここにかかる税率は5%だから、税の負担は約3.3万円

手取りは926.7万円です



更に所得税率が10%、住民税10%、社会保険保険料15%と固定するとこれらを20年間払わずに済んできたわけですから、このメリットも計算する必要がありますよね

所得税 3万円x10%=3,000円
住民税 3万円x10%=3,000円
社会保険料3万円x15%=4,500円

1か月あたり10,500円の削減ですから、20年だと252万円も得しているわけです



これが「選択制」確定拠出年金のデメリットの計算方法です

選択制確定拠出年金は社会保険の給付において不利益になることがあります!

これはその通りです



企業型確定拠出年金であれば、会社が掛金を拠出するべき!

確かに原則そうです



でも、そのおかれた環境の中で、失うものと得るものをちゃんと比較して自分なりの選択をすること、これが最も大切なことなのではないでしょうか?



私自身は、自分の将来に関する極めて重要なことを自分で「選択」できない人はそもそも確定拠出年金には向かないと思っています

きびしいかも知れせんが、今おかれている国の状況を理解し、今後向かうべき方向における問題点も理解し自分で行動を起こせる人しか、長期の資産形成、自己責任での資産運用なんてできるわけがありません

そういう意味では、私自身「選択制」推進派です

確定拠出年金だけが選択肢ではありません
ご自分なりの選択肢の中で、「選択制」が良ければやれば良いのです

他人から押し付けられた価値観で自分の生き方を変えるのではなく、ご自身の判断でしっかりこれからを考えていただければうれしいです

世の中フリーランチはありません

どんなことにもデメリットがあります

それを上回るメリットがあるのであれば、やってみる価値は大いにあると思います

いずれにしても、あなたの人生ですからあなたに「選択」の自由があります



※選択制を会社が導入する場合、上記デメリットをしっかり説明する義務があります

説明できないのであれば、導入を見送るくらいの覚悟はもちましょう

いずれにしても、確定拠出年金の導入は入れたらいいという問題ではありません

選択制に関わらず確定拠出年金はフォローアップが最も重要です

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