コラム

 公開日: 2016-09-22  最終更新日: 2016-10-05

水害に対応するための簡易的なBCP策定のすすめ

ここ数年、日本各地で台風や集中豪雨による水害の発生や被害が増えています。もし、皆さんの会社や施設が水害に遭った場合の対応や被害拡大の防止等について検討されているでしょうか。
こうした水害に備えて策定すべき計画が事業継続計画(BCP)です。BCPと聞くと、大企業が大地震に備えて策定するものだと考えている方が多いでしょう。また、実際に策定したBCPの多くが大地震を想定していることも事実です。しかし、BCPとは企業規模に関わらず、また、災害内容に関わらず策定されるべきものです。もちろん、災害の種類によってその内容にバリエーションは発生しますが、自社や取引先などが被災した場合に経営が立ち行かなくなることを防ぐという目的には変わりありません。
以前、このコラムでも「水害への備えと対応」()という形で紹介しており、一部重複する部分もありますが、改めて水害に向けた、企業規模に応じた「身の丈に合った」BCP策定ということで、内容を確認します。

水害で想定されるリスクと対策案

水害と言っても、その被害状況には幅があります。時には昨年発生した鬼怒川の堤防決壊のように大規模な洪水を引き起こすものもあります。今回は河川の氾濫等の大規模な被害をもたらす様な水害ではなく、水深10~20㎝程度の浸水が発生するレベルを想定します。それでも、事業の継続に支障をきたす様な被害が想定されます。

1.オフィスの浸水
1階にオフィスがある事業所の場合は、事業所内に水が浸入する可能性があります。そのため、床面に近い文書類はすべて水に浸ってしまいます。地震対策として設置した扉付きのキャビネの内部にも水は侵入します。この水は泥などが混じっているため、後で乾かしても内容が判別できなくなる可能性があります。重要な文書についてはより高い場所や上層階に保存すべきです。
また、オフィスで使用されるPC等の電子機器も水に対して脆弱です。個人用のPCはデスクに置かれているため、ある程度の浸水でも被害に遭わないかもしれませんが、オフィスにあるサーバー機は床面に設置されていることが多いため、少しの浸水でも故障してしまう可能性があります。そのようなサーバーに保存された取引データや重要文書等が一切読み出すことができなくなるかもしれません。機器類は再購入すれば復旧できますが(もちろん、そのコストの影響も大きいですが)、その中に収められたデータの喪失は事業の実施そのものに影響を与えかねません。サーバー機等の重要機器は高所に設置するとともに、バックアップをきちんと取得するべきです。

2.工場等の施設への浸水
工場の機械設備や、倉庫に保管されている原材料及び製品の在庫などは、高所に置くには限りがあるので、施設状況に合わせて個別に検討する必要があります。
工場等に設置されている機械設備の電気系統が水をかぶった場合、その修理に長期間要する場合があります。水害が発生する可能性に備えて、混乱せずに電源を切断する手順を確認するとともに、床面に近い部分の電源系統については防水対策を行うべきです。

3.取引先の被災
広範囲に発生する水害の場合、原材料や製品の仕入先が被災することもあり得ます。仕入先の被災状況によっては、長期間にわたって仕入ができなくなり、顧客からの注文に対応しきれなくなる可能性があります。あらかじめ仕入先を分散させる等の対応を検討する必要があります。
また、輸送経路となる道路が冠水したり、土砂災害が発生したりすると、仕入品が届かなかったり、製品等を販売先へ配送したりすることができなくなります。事前に複数の代替経路を検討するとともに、道路の復旧状況や通行状況に関する情報の入手手段についても検討する必要があります。
こうした対策が行われずに被災し、復旧がままならない場合、災害の対応力が脆弱という理由で取引先から取引停止を申し渡される可能性もあることに留意する必要があります。

4.経営者や社員の被災
水害の発生時に経営者や役員が会社にいるとは限りません。職位に応じた代行者を複数選定し、被災時には社内にいる上位の代行者が指示を出せるよう、事前にルール化する必要があります。
また、水害は必ずしも営業時間中に発生するとは限りません。夜間や休日等、会社や事業所に誰もいないときに被災した場合についても、各自がどのような行動を行うか、あらかじめ検討する必要があります。

水害用の簡易BCP策定手順(例)

自社が水害による被害を受けそうな場合、慌てて対策を考えてもまともな対応ができないばかりか、誤った対応による被害拡大等が発生する可能性が高いです。そのためにも、事前にBCPを策定しておくことで、いざという時でも策定したBCPに沿って行動することで、被害を最小化するとともに、復旧までの期間を短縮化することが可能となります。
今回は時間をかけない、簡易的な水害用のBCPを策定する手順を紹介します。策定手順として、以下のステップで検討します。
1.事前の確認と準備
2.実施業務の検討
3.BCPの発動基準

1.事前の確認と準備

まず、自社の所在する地域が水害に対してどのくらいの強度があるのかを把握する必要があります。一言で水害と言っても、幾つかの発生状況が考えられます。近くに河川が流れる場合はその水位上昇による氾濫や堤防決壊の可能性があります。河川がなくても、短時間の局地的な豪雨によって水が溜まる場合もあります。沿岸部では台風による高潮も考えなければなりません。各自治体では地域の状況に合わせて被害状況を想定したハザードマップを提供しています。このハザードマップの内容を踏まえて、自社の社屋や施設のある場所でどのくらいの浸水が発生するのかを確認することができます。その状況に応じて、以下の対応を検討する必要があります。
・水害発生時における顧客や従業員の避難先と避難経路の確認
・社屋や施設等における浸水対策の準備:防水版や土のうの準備、等
・文書や機器等の再配置:高所や上層階への移設、バックアップの実施と保管場所検討、等
・水害対応用の備蓄や用具の準備:食料、水、簡易トイレ、毛布、電池、ラジオ、等
・重要書類、事務用品(コピー用紙、領収書等)のバックアップ、別の場所での保管等
・水害対応に向けた従業員教育の実施

2.実施業務の検討

ここでは水害の発生による被害を最小化するための業務について検討します。BCPでは「何が何でも会社の業務を続ける」ための計画であると誤解する人がいます。BCPで言うところの事業継続とは、水害等で被災しても迅速に復旧して、会社が存続することを可能とすることであり、そのための一時的な業務停止は許容されうることに留意ください。
実施業務には水害が予想される際の事前対応業務と、実際に水害による浸水等が発生した後の応急対応業務の2通りについて検討する必要があります。

地震による被災とは異なり、水害の場合は実際に浸水等が発生するまでに時間的余裕があります。この時間を有効に活用することで、実際に浸水が発生した場合の被害を最小化することが可能となります。事前対応業務としては以下が考えられます。
・リアルタイム情報の収集:河川水位情報(国土交通省)や災害情報マップ(Google等)等の活用
・自治体等による避難情報の収集
・浸水対策の実施:出入口等の止水板や土のうの設置、等
・重要書類、PC等電子機器、在庫品等の上層階等への移動
・従業員の早期帰宅や高所等への避難


実際に浸水が発生した場合は、以下の様な応急対応業務の実施によって、被害の大きさが左右されます。

・緊急対策本部(災害対策本部)の設置:指揮系統を一本化し、応急対応業務の指示を実施
・コミュニケーション:取引先や自治体、近隣の企業や住民と密に情報交換を実施
・事業実施の判断:被災状況に応じて、本来の会社事業を実施するかどうかの判断
・サプライチェーン確認:道路の冠水状況を把握し、必要に応じて輸送手段の切換等を実施


3.BCPの発動基準

上記業務の開始時期はその場で判断するのではなく、上記の作業時間、特に事前対応業務に要する時間を考慮した基準をあらかじめ設定すべきです。
河川の水位については以下の様な基準があります。

・水防団待機水位:水防団が水防活動の待機を開始
・はん濫注意水位:水防団が出動、河川の近隣住民は避難準備を開始
・避難判断水位:自治体が避難準備情報の発表を判断、降雨等の継続による河川はん濫の可能性
・はん濫危険水位:自治体が避難勧告等の発令を判断、河川はん濫による被害の恐れ
・はん濫発生水位:河川水位が堤防を超え、はん濫が発生

例えば、以下の様な基準が考えられます。
・はん濫注意水位→事前対応業務の開始
・はん濫危険水位→避難勧告の発令→応急対応業務の開始

最低限、以上の様な内容を決めておくことで、直近で大きな水害が発生しても被害を抑えることが可能になると考えます。その後、水害時の代替業務や収束に向けた手順等を肉付けし、最終的に水害用のBCPが完成することができれば、と考えます。

上記内容に関連して、ご相談や質問などがございましたら、お気軽にご連絡ください。
デルタエッジコンサルタントでは、
・災害対策や業務継続計画(BCP)の策定、見直し
・災害等における緊急対策本部の運営の検討
・社内教育や訓練の実施
を支援するコンサルティングサービスを提供しております。
詳細は、弊社ホームページのリスク管理に関するページの「危機管理体制整備支援」「BCP策定支援」を参照ください。
お問い合わせフォームは、こちらです。

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経営コンサルタント 金子清隆

東京都中央区日本橋大伝馬町13-7 日本橋大富ビル3階 [地図]
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