コラム

 公開日: 2016-04-28  最終更新日: 2016-10-28

マイナンバー制度、4月のアナウンス

マイナンバー制度が施行されて4ヶ月になります。新入社員の対応も終わり、一息ついている事業者も多いのでは、と思います。
さて、この4月に個人情報委員会からいくつかアナウンスが発表されています。今回はその内容について確認します。

1.ガイドラインQ&Aの更新(4月12日)

「特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン(事業者編)」に関するQ&Aの一部に更新がありました。

Q4-6
「従業員や講演料等の支払先等から個人番号の提供を受けられない場合、どのように対応すればよいですか。」

回答内容の前半は内容がわかりやすくなるよう、語句等の追加が行われています。回答の最後に記載されている税務署での対応について、
「…個人番号の記載がないことをもって、税務署が書類を受理しないということはありません」
という記載が
「税務署では、番号制度導入直後の混乱を回避する観点などを考慮し、個人番号・法人番号の記載がない場合でも書類を収受することとしています」
という表現に変更されました。内容としてはほとんど変わらないのですが、マイナンバーを記載すべき法定調書等について、記載がなくても受理する、という点をより強調した変更となっています。
なお、従前から指摘している通り、マイナンバーの記載がない場合は提供を求めた経過等を記録、保存し、単なる義務違反でないことを明確にすることが重要だと考えます。

Q5-6
「財産形成住宅貯蓄・財産形成年金貯蓄の非課税に関する申告書は、法令に基づき、勤務先等及び金融機関を経由して税務署長に提出されることとなっています。(以下略)」

こちらについては税制改正で財産形成住宅貯蓄・財産形成年金貯蓄の非課税に関する申込書にはマイナンバーを記載せず、同非課税に関する申告書にのみマイナンバーを記載することとされたことに伴い、文言等の修正が行われています。
 

2.「転ばぬ先の事例集」の修正(4月14日)

「転ばぬ先の事例集」とは、マイナンバーの取得や保管・管理の場面で、トラブルが起きそうな事例を取り纏めた内容です。

◯利用範囲外のマイナンバー(個人番号)の提供をめぐる事例
「リサイクルショップに中古品の買取りを依頼し、契約書締結に際して本人確認書類の提示を求められたが、運転免許証等を持っていない旨説明したところ、店員からマイナンバー(個人番号)の提示を求められた。」

マイナンバーの利用範囲は法律で明確に決められています。現状、一般的な商取引で本人確認を目的とする場合でも、マイナンバーの提示を求めたり、書き取ったりすることはできません。
ただし、マイナンバーカードの表(おもて)面を確認して本人確認を行うことは可能です。その際に裏面を見ることの無いよう、注意する必要があります。

◯委託先に関する事例
「勤務先からマイナンバー(個人番号)の提供を求められ、安全管理措置について勤務先に問い合わせたところ、委託業者に任せているので委託先に問い合わせるよう言われ、委託業者に問い合わせたが、答えられないと言われた。」

マイナンバーに関する事務の委託元は「必要かつ適切な監督」を委託先に行うことが求められます、という説明がされているだけなので、少々補うことにします。
まず事例の状況について、安全管理措置を「委託業者に任せている」という主張の裏側に、自分たちにはわからないという意味があるように見えます。このことは、委託元が「必要かつ適切な監督」を十分に行っていないように見受けられます。
一方で、安全管理措置の内容について問い合わせがある場合、例え従業員でも具体的な内容を開示することはセキュリティレベルの低下を招きかねません。そのため、この場合は「然るべき安全管理措置を行っているが、内容は開示できない」旨の回答になると考えられます。

◯クラウドサービスをめぐる事例
「勤務先からマイナンバー(個人番号)の提出を求められた際に、マイナンバー(個人番号)の保管はクラウド上で行っており、そこで漏えいが起きても、会社として責任は取れないと言われた。」

ここでの争点は、事業者が然るべき安全管理措置を行ったかどうかによります。番号法では事業者は安全管理措置を行うことが決められています。マイナンバー関連事務を委託する場合、委託先は安全管理措置を講じるとともに、委託元は「必要かつ適切な監督」を行うことが義務付けられています。この場合、監督作業として行うべきこととは、以下の通りです。
・委託先選定の際、適切な安全管理措置が行われていることの確認
・契約後、委託先で行われている安全管理措置が適切に運用されていることの確認
この監督作業が十分でないと判断された場合、事業者に責任がないとは言い切れなくなる可能性があります。

◯マイナンバー(個人番号)を提出しなかったことによる不利益に関する事例
「勤務先からマイナンバー(個人番号)の提供を求められ、難色を示したところ、勤務先から、マイナンバー(個人番号)の提供がなければ解雇したり、賃金を支払わないと言われた。」

制度上、事業者は社会保障や税に関する提出書類に従業員等のマイナンバーを記載する義務があります。そのために事業者は従業員等に対してマイナンバーの提供を「求める」ことができ、従業員等はこれに応じるようお願いする、という記載となっております。つまり、制度上はマイナンバーの提供は強制的に行われるものではありません。そのため、上記事例の内容は労働関係法令に違反する、または民事上無効となる可能性があります。
時折、ネット上のコメントやセミナー等で、従業員等のマイナンバーの提出を「就業規則に盛り込めばいい」と主張する方もいるようですが、番号法に根拠を求めることは難しいと考えます。もし従業員等からマイナンバーの提供を拒否された場合、事業者はその経緯を記録し、税務署等に書類を提出する際にその記録を提示することが必要になります。
一方、マイナンバーの提供を拒否した従業員等に関して、現時点では特にありませんが、マイナンバーの目的は行政内部での事務の効率化であることから、将来的には行政手続きの対応が遅れる等の不利益を被るかもしれません。

◯証券口座に関する相談
「証券口座を持っている証券会社から、税の手続に必要であるとして、マイナンバー(個人番号)の提供を求められ、提供がなければ口座を凍結すると言われた。」

こちらも前項と同様、証券会社はマイナンバーの提供を「求める」ことができ、口座の所有者はこれに応じるようお願いする、ということになります。口座の凍結等については金融機関の事情にもよりますが、番号法だけの理由では難しい内容のように思われます。

3.本人確認書類の写しの取扱いについて(4月18日)

事業者が講演料の支払先等からマイナンバーを取得する際に本人確認を行う必要があります。その際に本人確認書類の取扱いを巡ってトラブルが発生しているようです。事業者は制度上何をしなければならないのかを認識した上で、それ以上の内容を求めることについて注意する必要があります。

Q1 講演料の支払先等からマイナンバー(個人番号)を取得する際に、本人確認書類の写しの提出を受ける必要がありますか。

こちらの回答について、本人確認を対面で行う場合とそうでない場合とで対応が異なります。
対面で本人確認を行う場合、制度上は本人確認書類の「提示」を受けることが原則となります。そのため、本人確認書類の写しを求める必要はありません。言い換えれば、本人確認書類の写しを強要することは法制度で決められた以上の行為となります。
一方、郵送等で本人確認を行う場合、本人確認書類の写しの「提出」を受ける必要があり、事業者はその「写し」を確認することで本人確認を行うことになります。

Q2 本人確認書類の写しの提出を受けた場合、その書類を保存する必要はありますか。

郵送等でマイナンバーを確認する際に、本人確認書類の写しを提出された場合、必要な手続を行って本人確認書類が不要となった段階で、速やかに廃棄することとされています。
問題は廃棄のタイミングをどうするか、ということになります。それは個々の事業者の管理体系や事務のやり方等で変わってくるので、一概には言えません。ある事業者では本人確認ができれば廃棄してもいいでしょうし、ある事業者では、マイナンバーの廃棄と同時に関連する本人確認書類等の廃棄を行うことになるかもしれません。事業者の状況に合った最適なタイミングを検討する必要があります。

マイナンバー制度については、今後も実態に応じて様々なアナウンスが行われる可能性があります。事業者のマイナンバー関連ご担当者は、こうしたアナウンス内容に注目し、必要に応じて規程やルール等に反映させる必要があります。

参考:
個人情報保護委員会トップページ
※「重要なお知らせ」に上記内容へのリンクが記載されています。

上記に関して、ご関心、ご相談等ございましたら、お気軽にお問い合わせください。
お問い合わせフォームは、こちらです。

デルタエッジコンサルタントでは、マイナンバー制度で運用上発生する様々な事象や、逐次発生する制度改正への対応方法、等について質問や相談をしたい事業者様に対して、お手軽に利用できるマイナンバーアドバイザリサービスを提供しております。
詳細は、弊社ホームページの「マイナンバー制度対応サービス」を参照ください。

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