コラム

 公開日: 2016-04-25 

東京防災を活用した企業やオフィスの首都圏直下型地震に向けた備え

熊本地震が発生しておよそ10日が経過しました。現地では未だに多数の余震が続いており、多くの方々が避難されています。被災された皆さまにはお見舞い申し上げます。

熊本地震が起きる前、政府の地震調査研究推進本部で公開されている「九州地域の活断層の長期評価(第一版)」(平成25年2月1日公表)では、熊本地震の震源とされている布田川断層帯を含む九州中部地域の長期評価として、30年以内にM6.8以上の地震が発生する確率は18~27%でした。この結果が公開されてから約3年後に、今回の熊本地震が発生したことになります。
同様に、「関東地域の活断層の長期評価(第一版)」(平成27年4月24日公表)では、関東地域の活断層で30年以内にM6.8以上の地震が発生する確率は50~60%となっています。また、「相模トラフ沿いの地震活動の長期評価(第二版)」(平成26年4月25日公表)では相模トラフ沿いで30年以内にM7程度のプレート型地震の発生確率は70%という高確率になっています。つまり、首都圏ではいつ大地震が発生してもおかしくない状況にあるといえます。

今回の熊本事件で注目されている1冊の本があります。それは、昨年の9月に東京都が都内の各世帯や事業所に配布した「東京防災」です。内容については首都圏での大地震に対する準備や行動等について記載されていますが、その内容のほとんどは個人や家庭向けの記載となっています。今回は事業者の立場でどのような準備をすべきかについて、「東京防災」の内容を読み替えて確認しようと思います。

「東京防災」で推奨する防災アクション

「東京防災」では大災害に対して、特に重要な防災アクションを10項目挙げています。その内容は、以下の通りです。
1.「日常備蓄を始めよう」
2.「非常用持ち出し袋を用意しよう」
3.「大切なものをまとめておこう」
4.「部屋の安全を確認しよう」
5.「家具類の転倒防止をしよう」
6.「耐震化チェックをしよう」
7.「避難先を確認しよう」
8.「家族会議を開こう」
9.「災害情報サービスに登録しよう」
10.「防火防災訓練に参加しよう」

1.「日常備蓄を始めよう」

「東京防災」では災害用備蓄として、従来の防災用備蓄に加えて「日常備蓄」の考え方を紹介しています。企業や事業拠点においても、可能な限り実施すべき内容です。例えばトイレットペーパーなどのペーパー類、乾電池、ゴミ袋など、日常業務で常備されているものは対応し易いでしょう。また、ウォーターサーバーを導入している事業所であれば多少多めに予備のボトルを置くことも考えられます。
企業や事業拠点で「日常備蓄」を検討する際には、「ムダ」な発注や在庫だとされないよう、社内のコンセンサスをとることも必要です。
また、非常食や簡易トイレなどの防災用備蓄用品についても、賞味期限や消費期限を考慮した入れ替えについても計画する必要があります。入れ替え対象の物品については訓練等で使用方法を習熟するために使用する等、無駄なく入れ替えをするよう工夫する必要があります。

2.「非常用持ち出し袋を用意しよう」

東京の企業や事業拠点の場合、出社時間帯に大地震が発生すると、多くの従業員は帰宅困難者となり、しばらくの間はオフィスに留まらなければならないでしょう。その後、帰宅可能な状況になったとしても、交通機関が復旧状況によっては長時間徒歩で移動しなければなりません。そのため、非常用持ち出し袋には、数日間の避難生活で必要な物資と長時間の徒歩移動に耐えうる物品の双方を入れておくことも重要です。例えば、ヘルメットや運動靴などが必要でしょう。共通的なアイテムは会社で支給することも可能ですが、従業員それぞれの状況に対応するアイテムは、従業員個人で準備する様アナウンスすることも必要です。

3.「大切なものをまとめておこう」

企業や事業拠点の重要書類等は持出すものとオフィスに置くものとを明確に分けておく必要があります。持出し対象は最小限とし、持出し用の入れ物や持出し担当者の任命も含めて事前に準備すべきです。「東京防災」ではファスナー付きビニールケースと記載されていますが、内容が外から見えないような入れ物にすべきだと考えます。一方、オフィスに置いておくものについては、盗難等の被害に遭わない様、鍵付きのキャビネに格納することが必要です。

4.「部屋の安全を確認しよう」

「東京防災」では室内の安全確保に向けて、以下の3つの対策を掲載しております。
「なるべく部屋に物を置かない」について、オフィス内では日常の整理整頓が成果に結びつきます。オフィス内の通路やデスクに文書ファイル等がおいてある場合、避難時の障害になるばかりか、混乱に乗じてオフィスに侵入してくる不審者に重要情報を持ち逃げされてしまう可能性も否定できません。
「避難経路確保のレイアウト」について、避難経路の状態を定期的に確認することが必要です。上記で述べた通り不必要な物や書類でふさがれていないことを確認することも重要ですが、以前は取り抜けできた通路がいつの間にか閉め切りになっていることもあるので、注意が必要です。特に賃貸のオフィスビルに入居している場合、オフィス管理会社との情報連携を十分に行い、必要に応じて防災マニュアル等に反映する手順を確立させることが重要です。
「火災などの二次災害を防ぐ」について、一般のオフィスでは火元があることは少ないと思いますが、もしある場合は家庭での対応と同様に対処することが必要です。オフィスビルに入居している場合は、オフィス管理会社に地震発生時の電気やガスの供給や対処について確認することが必要です。オフィスで一番の問題は、燃えやすい紙がいたるところに存在することなので、日常の整理整頓が重要になると考えます。

5.「家具類の転倒防止をしよう」

「東京防災」にはオフィスでの転倒防止対策チェックリストがあるので、その記載に則って対応することが必要です。追加するとすれば、書類を収納するキャビネについて、大きな揺れによる書類の散乱防止や防犯のため、鍵を掛けることが重要です。また、机上のパソコンもデスクトップ型であれば固定し、ノート型であればデスクの引き出しに格納して鍵を掛ける、等の対応が必要です。

6.「耐震化チェックをしよう」

都内の建物は免震、耐震対策が行われていることが多いので、倒壊の危険性は比較的少ないと考えられます。しかし、今回の熊本地震のように震度5以上の地震が何回も発生することもあるので、油断しないことが重要です。地震対策が十分でない建物に入居している場合は、強い地震によってひび割れが生じたり、最悪の場合倒壊したりする危険性もあります。また、オフィスビルには帰宅難民者や近隣の住民が一時的に避難することもあり得るので、地震対策の十分でない建物である場合は近隣の強度の高い建物等に避難することをあらかじめ検討するとともに、避難場所についても手当てすることが必要です。

7.「避難先を確認しよう」

大地震の発生時にオフィスにいる場合は、そのまま待機することになりますが、建物の状況が思わしくない場合は近隣の避難場所に移動することになります。しかしながら、都内の場合は一時集合場所等が避難者で溢れることも想定されます。オフィスを出るべきかどうかの判断を行えるよう、オフィス管理会社と連携することが必要です。営業等で外出する従業員については、近隣の避難場所に避難するよう、平時から周知することが必要です。
なお、説明の必要はないと思いますが、オフィスビルの場合は高層階であってもエレベーターを使用せず、階段を使うようにすることが必要です。

8.「家族会議を開こう」

オフィスの場合、家族会議ではなく防災会議になります。企業や事業拠点では平時から定期的に防災や事業継続計画に関する会議を開催し、避難や安否確認、連絡網などの社内ルールを決めたり、改善したりすることが必要です。企業としては防災等に関するマニュアルを策定し、全社員に周知することが必要となります。各地に事業拠点を持つ企業であれば、拠点ごとにローカルルールを検討、策定することも重要です。

9.「災害情報サービスに登録しよう」

安否確認については、企業の場合固有のシステムやサービスを活用するところも多く存在します。平時に定期的な訓練を行い、安否確認の仕組みや操作手順について習熟することが必要です。もちろんNTTの災害伝言ダイヤルや携帯電話キャリアの災害用伝言板を活用しても構いませんし、直接通話やメール、SNSを活用することも問題ありません。少なくとも、組織としてどのような手段で対応するのか決定し、ルール化し、いざという時には策定したルールに従って行動することが重要です。
災害情報については、帰宅困難者としてオフィス内で待機する場合は、情報を収集する担当を決め、その担当が情報を収集、整理した上で組織内に伝達する仕組みを構築することを検討ください。各自がPCを使って情報収集をするだけでは、情報の範囲や制度にばらつきが生じるだけでなく、ライフラインが寸断された際に、限りある電力を浪費することにもなりかねません。

10.「防火防災訓練に参加しよう」

企業や事業拠点であれば、定期的に防火防災訓練を企画し、実施する必要があります。訓練の目的としては、以下が考えられます。
・策定したマニュアルやルールの実施可能性の検証
・従業員のマニュアルやルールの習得
・災害用備品の取り扱いの習得
・災害用備蓄の入れ替え

可能であれば、自社だけでなく行政や近隣の企業、住民などを巻き込むことで、地域として災害に対応する備えができればより良いと考えます。

今回紹介した内容はごく一部であり、他にも有用な情報が「東京防災」にはたくさん記載されています。無償配布されたのは世帯や事業所毎に1冊ですが、電子版であれば無償でダウンロード可能です。企業の防災マニュアルが十分に整備されていない場合は、この「東京防災」を参考に、防災意識を高めていけばいいのでは、と思います。

参考:
政府、地震調査研究推進本部
 (冒頭で述べた活断層や相模トラフ、等の長期評価資料があります)
東京都、防災ブック「東京防災」

上記内容に関連して、ご相談や質問などがございましたら、お気軽にご連絡ください。
デルタエッジコンサルタントでは、
・災害対策や業務継続計画(BCP)の策定、見直し
・部門や事業拠点等の追加的なルールの検討、策定
・社内教育や訓練の実施
を支援するコンサルティングサービスを提供しております。
詳細は、弊社ホームページのリスク管理に関するページの「リスク管理体系構築支援」「BCP策定支援」を参照ください。
お問い合わせフォームは、こちらです。

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