コラム

 公開日: 2016-04-17  最終更新日: 2016-10-28

マイナンバー制度の災害対応について-熊本県の地震に関連して

熊本県等で発生した地震により被災された皆さまに心よりお見舞い申し上げます。

さて、今回の地震で気になることの一つに、マイナンバー制度との関わりがあります。マイナンバー制度でマイナンバーを利用する業務として、
・税務
・社会保障
・災害対策
という説明がありました。今回の地震はマイナンバー制度が施行されて初めての大災害となります。マイナンバー制度における災害対策の内容について確認するとともに、マイナンバー搾取等の被害に遭わないように注意していただきたいと思いますので、ご参考にしてください。
※以下の情報は2016年4月時点の内容であり、今後変更される可能性があります。

マイナンバー制度における災害対策の内容

マイナンバー制度で定義されている災害対策の内容について、どのくらいの方がご存知でしょうか。マイナンバー制度の説明資料に記載されているのは、以下の内容です。
・被災者生活再建支援金の支給
・被災者台帳の作成事務


災害対策については日常の事務ではないことから、ほとんどの方はこの記載レベルの知識で止まっていると思います。では、より詳細な内容はどこにあるのでしょうか。それには制定された法律の内容まで遡る必要があります。

「被災者生活再建支援金の支給」の内容

「被災者生活再建支援金の支給」について、行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(マイナンバー法)には以下のように記載されています。
(利用範囲)
第九条(中略)
4 前項の規定により個人番号を利用することができることとされている者のうち所得税法第二百二十五条第一項第一号、第二号及び第四号から第六号までに掲げる者は、激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律(昭和三十七年法律第百五十号)第二条第一項に規定する激甚災害が発生したときその他これに準ずる場合として政令で定めるときは、内閣府令で定めるところにより、あらかじめ締結した契約に基づく金銭の支払を行うために必要な限度で個人番号を利用することができる。

この内容は、東日本大震災の際に被災者が預金通帳やキャッシュカード、保険証書、印鑑、本人確認書類等を失ってしまい、当座の生活資金や生活再建資金とする金融資産の引出しや保険金等の受領が円滑に行われなかった経験を踏まえ、激甚災害が発生した場合に限って、被災者が預金の引出し等を円滑に行うため、金融機関が保有する個人番号(マイナンバー)を顧客検索のキーとして例外的に利用することを認めるものです。
なお、この項目が適用されるのは「災害が発生した時点」ではなく、政令により「激甚災害」の指定を受けてからとなります。

例えば、被災者が銀行から預金を引き出す場合、預金通帳、キャッシュカード、印鑑等を喪失していて口座が特定できない場合、金融機関に事前に通知したマイナンバーを伝えれば、金融機関は特例としてマイナンバーを検索キーとして利用できる、という内容になります。

「被災者台帳の作成事務」の内容

被災者台帳とは、被災者支援について「支援漏れ」や「手続の重複」が行われないよう、また、中長期にわたる被災者支援を総合的かつ効率的に実施するため、被災者の被害状況や支援状況、配慮事項等を一元的に集約した台帳のことです。被災者台帳を活用することで、罹災証明書の添付を必要としていた支援施策(当該市町村業務)を申請する際に罹災証明書の添付を不要とする運用が可能とされています。
被災者台帳に登録するには、被災者によって市区町村に対して「被災者台帳情報提供」の申請を行う必要がありますが、「被災者台帳の作成に関する実務指針(市区町村導入編)」によると、
「個人番号(いわゆるマイナンバー)等の活用に係る具体的な手順については、「平成27年度被災者台帳調査」の成果を踏まえて、別途、改めて周知することを予定している。」
とあります。また、「平成27年度被災者台帳調査」の結果はまだ公開されておらず、「被災者台帳情報提供」申請様式もマイナンバーに対応していないようです。

災害対策目的のマイナンバー利用の可能性

まず「被災者生活再建支援金の支給」について、現時点で金融機関が収集するマイナンバーは
・投資信託・公共債など証券取引全般
・マル優・マル特
・財形貯蓄(年金・住宅)
・外国送金(支払い・受け取り)など
・信託取引(金銭信託など)
の口座等を有する方に限られています。銀行口座への適用はまだ行われていません。また、上記目的での金融機関のマイナンバー収集は始まっていますが、マイナンバーによる災害時の手続きはまだ整備されてないように見受けられます。
「被災者台帳の作成事務」についても、上述した通り、マイナンバーを活用する手続きについてはまだ整備されていないようです。
つまり、現時点(2016年4月時点)では災害対策目的でマイナンバーを利活用する環境が整備されていないと考えられます。すなわち、マイナンバーを使って何らかの申請や手続きを行うことは現時点では考え難い、ということです。
今後、政令等でマイナンバーを利用できる対象が追加される可能性はあります。また、ネット上でもマイナンバーを活用したら、という意見が見られます。しかし、現実問題として、マイナンバーカードの交付は進んでおらず、マイナンバー関連システムのニュースも絶えません。そのような状態で無理やり「マイナンバーも使えます」ということを行うと、ただでさえ忙しい現地の役所や役場にさらなる負担をかけることになると思います。

懸念される事象

今回の熊本権を中心とする地震は近いうちに激甚災害の指定を受けることが想定されますが、上記の通り、マイナンバーを利用する局面はないと考えられます。しかし、こうした混乱状態に乗じて、悪意を持ってマイナンバーを搾取する行為が懸念されます。例えば、行政機関や金融機関の担当者を装い、「マイナンバーは災害対策でも使われます」と伝えた上で、以下のような発言がされる可能性があります。

・被害調査のため、マイナンバーを含めた被災者情報を教えてください。
・お見舞い金が支払われるので、マイナンバーを教えてください。
・税金が控除されるのでマイナンバーを教えてください。
等々

災害対策に限らず、マイナンバーは法律で指定された、限定した事務でしか利用できませんし、現時点で利用できる環境が整備されていません。また、仮に利用する局面があったとしても、電話や口頭で聞き取りをすることはありません。
もし利用局面があるとすれば、マイナンバーカードを取得された方々がカードの表(おもて)面を身分証明書として利用することくらいだと考えられます。その際にマイナンバーの記載されている裏面は提示する必要はありません。

大変な状況にある被災地の方々には悩みの種を増やすことになるかもしれませんが、十分に気をつけていただきたいと思います。また、熊本県に関係のある方々にも何か理由をつけてアプローチされる可能性もあるかもしれません。冷静に考えれば矛盾のあることがわかると思います。
今後も様々な災害が発生する可能性があります。その際に「火事場泥棒」のような悪事を行う者がいます。こうした人たちの思い通りにならないよう、制度の内容を理解し、十分に注意することが必要だと考えます。

参考
行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」(マイナンバー法)
内閣府、防災情報「被災者台帳」のページ(「被災者台帳の概要」「被災者台帳の作成に関する実務指針(市区町村導入編)」等)

上記に関して、ご関心、ご相談等ございましたら、お気軽にお問い合わせください。
お問い合わせフォームは、こちらです。

デルタエッジコンサルタントでは、マイナンバー制度で運用上発生する様々な事象や、逐次発生する制度改正への対応方法、等について質問や相談をしたい事業者様に対して、お手軽に利用できるマイナンバーアドバイザリサービスを提供しております。
詳細は、弊社ホームページの「マイナンバー制度対応サービス」を参照ください。

また、災害対策や業務継続計画(BCP)の策定・見直し、及び社内教育や訓練の実施を支援するコンサルティングサービスを提供しております。
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