コラム

 公開日: 2015-09-24  最終更新日: 2016-08-30

水害への備えと対応

先日発生した鬼怒川の堤防決壊等、日本では台風や集中豪雨などで河川が氾濫したりすることで、個人や企業の住宅や資産、公共施設などに損害を与えたり、時には人命を奪ったりする水害が毎年のように発生しています。こうした水害による被害を最小化するには、
・公助:国や自治体など、行政による対応
・自助:個々の住民による取組
・公助:地域住民や企業による「水防活動」
の三種類の活動をうまく組み合わせることが重要です。
今回は、個々の家庭や企業での備え、そして地域の水防活動について確認します。

水害の発生状況

水害への対応について検討する前に、現在の日本における水害の発生状況について確認します。
国土交通省の統計調査等から、全国の1,742市区町村(平成25年末)における、平成16年から25年までの10年間の水害の発生状況は以下の通りです。

・一度も河川の氾濫などによる水害が起きていないのは、55市区町村(3.2%)
・残り1,687市区町村(96.8%)では10年間に1回以上の水害が発生
・さらに半数以上の925市区町村(53.1%)では、10年間に10回以上の水害が発生
水害発生状況

水害が発生する時期は、毎年6月~7月の梅雨や8月~9月の台風に集中しています。特に最近は、時間雨量50mmを超えるゲリラ豪雨を原因とする水害の発生件数が増加傾向にあります。昨年(2014年)の場合、床上浸水10棟以上の大きな被害が生じた水害は、全国21の地域で発生しました。

水害への事前対応

水害に限らず、あらゆる災害はまず、「自分の身は自分で守る」、すなわち「自助」が基本となります。そのためには、日常から水害の発生に備えて準備を行うことが必要です。平常時に準備すべき事項は、以下の通りです。

1.ハザードマップの確認
まず、自社や自宅がある地域ではどのような水害リスクがあり、浸水範囲等、どの程度の被害が想定されるかを確認することが重要です。そのために活用するのが、自治体で提供するハザードマップです。この内容を踏まえて、自社の社屋や自宅に施すべき対策を検討することになります。
自社や自宅が高台にあっても、周辺が浸水して孤立する可能性があるので、安心してはいけません。また、集中豪雨やゲリラ豪雨による降水量が排水設備の機能を上回る場合は浸水が発生したり、地下室やアンダーパス(鉄道や道路の下を通る地下道や掘り下げ式になっている立体交差の下の道路)が冠水したりする可能性もあります。
また、これに関連して、自社や自宅のある地域の地名の由来や地形、暗渠の有無、過去に発生した災害の記録を確認することも重要です。

2.避難場所、避難経路の確認
自社や自宅が浸水の被害に遭う可能性があったり、周囲の浸水により孤立する可能性があったりする場合は、安全な避難することが重要です。こちらもハザードマップを確認し、地域の避難場所と避難経路を確認します。避難経路は必ずしも最短距離での経路が最善策とは限りません。状況にもよりますが、氾濫の可能性のある河川や、浸水する可能性のあるくぼ地などがある場合は、遠回りになっても安全を優先した経路にすべきです。また、実際に歩くことで、避難時間を計測するとともに、経路上のマンホールや側溝等の位置を確認して安全性を確保するべきです。

3.浸水対策の実施
自社や自宅に対しては、可能な限りの浸水対策を行うべきです。特に地下・半地下の入り口や駐車場のある建屋の場合、周辺の水がそこに集中し、浸水する可能性があります。止水壁や止水板等を設置したり、土のうを準備したりすることが考えられます。
企業の場合は、浸水が想定される高さ以上のフロアに電子機器、空調設備、自家発電設備、その他重要設備や物品を設置することで、仮に孤立状態になっても、しばらくは持ちこたえることが可能となります。また、PCやサーバが水没すると、取引等に関する重要データが喪失される危険性もあるので、バックアップを取得し、媒体を高所や遠隔地等、被災しない場所に保管しましょう。

4.非常時の備蓄や持出し品の準備
避難しなくてはならない状況に備えて、非常時の持出し品を準備します。準備すべき物品は以下の通りです。
・食料品等:飲料水、乾パンやクラッカー、レトルト食品、缶詰、等
・医薬品:救急医薬品、常備薬、等
・貴重品:現金、預金通帳、印鑑、健康保険証、身分証明書、等
・衣類等:下着、タオル、軍手、雨具、靴、等
・日用品:懐中電灯、ラジオ、電池、ロープ、マッチ・ライター、ティッシュペーパー、ゴミ袋、筆記用具、等
上記の物品を、徒歩で避難所まで無理なく移動できる程度の量に絞り込むことが必要です。
また、企業の場合は社員や顧客、周辺住民の避難場所にもなり得るので、上記のほか、毛布、簡易トイレ、スコップ、簡易ボート、といった備蓄も実施すべきです。
なお、飲料水や食料品、電池等、保存期間が限られているものについては定期的に確認し、入れ替えるようにすべきです。

5.安全確認の方法
外出している社員や、通勤・通学等の家族の安否を確認し、連絡を取り合う手段を決めておく必要があります。企業の場合は独自に安否確認システムを構築したり、安否確認サービスを利用したりする場合もありますが、それがなくても、通信会社の提供する「災害⽤伝⾔サービス」を活用することができます。

6.水害に伴う事業上のリスクへの対応
水害による工場設備等の水没に備えた損害保険への加入や、事業中断から復旧までの間の運転資金を確保するための施策等について、検討、対応すべきです。

水害への初期対応

大雨や台風が接近するときは、気象情報や、付近の雨量や河川の水位に関する情報に注意しなければなりません。水害が発生する可能性がある場合は、気象庁より洪水注意報や洪水警報などが発令されます。避難が必要な場合は自治体から避難勧告や避難指示が発令されますが、状況によっては、自主的に早期に避難するという判断も必要になります。
企業の場合、交通機関が動いているうちに顧客や従業員を帰宅させる、等の判断が必要になる局面もあります。
企業であれ家庭であれ、前項で述べた事前準備の内容に則って、速やかに対応することが重要です。

1.リアルタイム情報の収集
気象庁から発信される気象情報や注意報・警報の発令は地域の水害リスクがどのくらい高まりつつあるのかを知る目安になります。また、国土交通省の提供する「川の防災情報」のサイト(http://www.river.go.jp/)では、雨量や水位のリアルタイム情報を確認することができます。水位情報には、各観測地で以下の水位情報が設定されているので、行動の目安となります。
・水防団待機水位:水防団が出動のために待機する水位
・はん濫注意水位:市町村長の避難準備情報等の発令判断の目安、住民のはん濫に関する情報への注意喚起、水防団の出動の目安
・避難判断水位:市町村長の避難勧告等の発令判断の目安、住民の避難判断の参考
・はん濫危険水位:洪水により相当の家屋浸水等の被害を生じるはん濫の恐れがある水位

2.避難情報等の入手手段
一般には防災無線になると考えますが、豪雨等の場合は聞き取りにくいという報告も過去にされています。よって、自治体のホームページやSNSによる情報収集も必要になります。

3.浸水による被害軽減策の実施
水害が発生する可能性が高まった場合(例.付近の河川の水位がはん濫注意水位に達した場合)、出入り口に止水板や土のうを設置する、重要書類やPC等電子機器、その他重要物品等を上層階に移動する、等の対応を行う必要があります。手順については、事前にマニュアル化し、実際の場面で戸惑うことなく行動することが重要です。

4.従業員等の帰宅指示、避難指示
水害が発生する危険性がある地域に対しては、市区町村から「避難勧告」が発令されます。避難勧告が発令されたら、可能な限り早く避難を始めることが必要です。さらに状況が悪化すると、「避難指示」が発令されるので、その場合は速やかに安全な場所に避難する必要があります。もし従業員を帰宅させる場合は、「避難勧告」の前に実施すべきです。
なお、避難勧告や避難指示が発令されていなくても、水位の上昇度合いが急である、付近の道路が冠水し始めている、等の状況の場合は、早めに安全な場所に避難すべきです。冠水した道路を歩くことは、マンホールや側溝の蓋が空いていてもわからないことがあるので、冠水前に移動するか、回り道になっても高い位置にある道路を使うようにすべきです。

企業での水害対応

企業においては上記で述べた初期対応に追加して、防災や事業継続という観点で実施すべき活動があります。その活動によって、被害の大きさや復旧までの期間が左右されることもあります。

1.緊急対策本部(災害対策本部)の設置
水害が発生する可能性が高くなった時点で、企業内部で対策本部を立ち上げ、水害への対応に関する指揮系統を一本化することが重要です。
対策本部の指揮は社長等、その地域のトップが対応することが一般的ですが、出張等で不在の場合も十分あり得ます。よって、事前に序列を含めて代行者を決めておき、その時点で社内に在席する一番上位の者が指揮する様にすべきです。

2.コミュニケーション
企業の様々なステークホルダーに対して、相手の立場や自社との関係性に基づく適切な情報発信や情報交換を行うことが必要です。例えば、従業員に対しては安否確認や避難指示を出すことが必要です。取引先や他地域の拠点に対しては物流の一時停止、被災状況や事業復旧までの見通し、近隣の企業や住民、自治体に対しては避難場所の開放や物資等の提供、といった連絡をする必要があります。
収集した情報は対策本部で一本化して取り纏め、状況を把握した上で適切な対応を行う必要があります。

3.サプライチェーン
原材料や商品の仕入れや発送を行う事業の場合、道路や交通網の状況に応じて対応する必要があります。被災が予想される地域にある企業はもちろんですが、当該地域と取引のある他地域の企業についても影響が発生します。被災地域の企業では物流機能を停止する判断が必要になる一方で、他地域の取引企業は物流が停止することを想定して、代替的な仕入先や輸送手段に切り替えることを判断する必要があります。

「共助」としての水防団(消防団)

近年、水害の規模や被害が拡大するにつれて、行政や個人の取組と並行して、地域の人々が協力して堤防の補強を行なったり、注意喚起を行なったり、避難誘導したり、といった活動の重要性が高まってきています。この活動の中心となるのが水防団です。
水防団とは、「自分たちの地域は自分たちで守る」という精神に基づき、水害から地域を守るため、地域の住民が団員となって水防活動をする組織です。なお、消防団が水防活動を行う地域もあります。
水防団は地域の住民によって構成されますが、市区町村によっては、当該地域に在勤、在学するものも入団可能なっています。詳細は該当する市区町村で確認ください。

上記内容に関連して、ご相談や質問などがございましたら、お気軽にご連絡ください。
デルタエッジコンサルタントでは、災害対策や業務継続計画(BCP)の策定、及び社内教育や訓練の実施を支援するコンサルティングサービスを提供しております。
詳細は、弊社ホームページのリスク管理に関するページの「リスク管理体系構築支援」「BCP策定支援」を参照ください。
お問い合わせフォームは、こちらです。

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