コラム

 公開日: 2015-06-28  最終更新日: 2015-07-02

感染症と企業の対応としてのBCP策定

昨年、国内では戦後初となるデング熱の国内感染という事態が発生しました。デング熱を媒介するヒトスジシマカは越冬することができないとされているので、今年の夏がどうなるかは未知数です。しかしながら、海外から持ち込まれる可能性や気候の温暖化を考えると、相応の備えをすべきだと考えます。
一方、海外に目を向けてみると、隣国の韓国ではMERS(中東呼吸器症候群)の感染が拡大しています。また、最近話題が少ないですが、西アフリカのエボラ出血熱もまだ収束していない状況です。
こうした感染症については、以前は冬期におけるインフルエンザの大流行を警戒するケースが多かったのですが、昨今の地球温暖化の影響や海外との人的交流の増加に伴って、様々な感染症についても考慮しなければならない時代になってきています。
また、感染症が流行した場合、インターネットなどで誤った情報が流布すると、パニックを誘発する可能性もあるので、感染症について正確な知識を獲得した上で、適切に対処することが重要なポイントとなります。
という訳で、感染症の概要と、企業として対処すべきポイントについて確認しようと思います。

感染症の概要

感染症とは、ウイルスや細菌などの病原体が体内に侵入し、増殖することでもたらされる病気の総称です。日本では感染症の予防や患者への対策を図るため、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(以下、「感染症法」)が制定されています。感染症法では症状の重さや病原体の感染力などから、以下の様に感染症を分類しています。
感染症分類

感染症リスクによる企業活動への影響

感染症のリスクについては、感染症の種類や感染経路によって変わってくるので、まずは想定される感染症の正確な情報を収集することが必要です。
例えば、昨年国内で話題になったデング熱については、以下の様な特徴があります。

・蚊が媒介するデングウイルスによって起こる感染症
・媒介する蚊の存在する熱帯・亜熱帯地域で発生
・デングウイルスはヒトからヒトへ直接感染することはない
・海外で感染して帰国後に発症する輸入症例は毎年200例前後の報告がある(昨年は、国内にいるはずの無いデングウイルスを持つ蚊による感染のため、話題になった)

こうした特徴を考えると、仮にオフィスに感染者がいたとしても、ウイルスを媒介する蚊がいなければ他の従業員に感染することはありません。オフィス内に生息する蚊は、デング熱を媒介しないイエカだと思われるので、感染の可能性は極めて低いと考えられます。
一方、最近話題になっているMERS(中東呼吸器症候群、Middle East Respiratory Syndrome)については、以下の様な特徴があります。

・MERSコロナウイルスを原因とする
・主として中東地域で発生し、ヒトへの感染経路は不明確
・ヒトからヒトへは飛沫感染や接触感染する可能性はあるが、感染力は弱い
・国内での発症事例なし

以上から、仮に中東や流行地域から帰国した従業員が風邪の症状を訴えた場合には、MERS感染者の可能性を疑った上で、デング熱よりも適切かつ迅速な対応を行うとともに、パニックにならないようにすることが求められてきます。

さて、ここで事業継続の観点から感染症リスクについて考えてみます。
感染症リスクには、以下の特徴が考えられます。
・地震や火災と異なり、社屋や工場、情報システム、及びライフラインに対する物理的破壊の可能性は皆無
・人的被害が主となるが、その影響は感染症の内容や広がりによって変動する
・人的被害が大きくなり、長期化することにより、自社の活動やライフラインの稼働に影響が出る可能性がある
災害等による業務復旧とパンデミックによる業務復旧のイメージを以下に提示します。ただし、このイメージは感染者の大半が回復することを前提にしています。致死率の高い、または治療期間の長い感染症の場合はこのイメージよりもさらに稼働が低下し、長期化すると考えられます。
感染症による業務復旧イメージ

なお。パンデミックの業務継続計画(BCP)を検討する際、従業員の欠勤率がどのくらいに想定するかが課題の一つとなりますが、概ね30~50%程度としているケースが多いようです。

感染症リスクによる業務継続計画(BCP)のポイント

感染症リスクについては先に述べたように、地震等の災害リスクと異なり、業務レベルが急激に低下することはなく、感染の拡大に従って低下していくと考えられます。しかしながら、その過程で対応を誤ったり、遅れたりした場合は、最低限の業務レベルを支える人的リソースが不足する事態になりかねません。以下にいくつかのポイントを取り纏めました。

1.感染症の情報把握
感染症と言っても冒頭に提示した通り、様々な種類があります。まずは感染症の種類とその特徴(感染経路、症状、等)や防止策(ワクチンの有無、感染者への対応、等)を正確に把握し、パニックに陥らないことが重要です。

2.情報収集と臨機応変な対応
感染症リスクの場合、感染症の種類や拡散状況はケースバイケースであり、その対応も変わってきます。外部情報(WHO、厚生労働省、等)を適時収集するとともに、社内についても従業員の感染状況や出社状況(従業員本人が感染していなくても、家族が感染することで出社が難しいこともあり得ます)をタイムリーに把握することが重要です。例えば、災害時の安否確認システムを流用することも検討していいと思います。
場合によっては、WHOや厚生労働省の宣言がある前に、パンデミック時の業務体制に移行する判断も必要となってきます。

3.緊急時体制への移行
基準となるのは、WHO(国際保険機構)のPHEIC宣言や政府による緊急事態宣言ですが、上記の通り、社内の感染状況に応じて早めの対応を行うケースもあり得ます。また、災害時も同様なのですが、特に感染症では無差別に感染することから、その時点の健常者がスムーズに指揮できるよう、危機管理体制のトップの序列等を明確に決めておく必要があります。

4.海外拠点の対応
海外拠点において感染症リスクが高まった場合は、帰国するか現地にとどまるかの判断を強いられます。直行便が少ない地域の場合は、迂回経路や空路以外の手段を含めて検討する必要があります。一方で、感染症の流行が始まっている場合は出国が制限されたり、帰国しても水際対策の一環で停留や隔離されたりする可能性もあります。また、混雑した空港では、感染の可能性も高くなります。そのため、感染症の種類によっては、現地に留まってやり過ごすという選択肢も考えなければならないかもしれません。そのために、拠点や拠点先の自宅に薬品や食料の備蓄しておくことも必要です。特に医療体制が不十分な拠点であれば、使い捨ての手袋等も備蓄する必要があります。

今後、様々な局面で多様な感染症によるリスクが高まってくることが予想されます。また、例年の様にインフルエンザの対応必要です。それでも慌てずに、目の前の事実をしっかりと把握し、適切に対処することで感染症によるリスクを可能な限り抑えることができると考えております。

上記内容に関連して、ご相談や質問などがございましたら、お気軽にご連絡ください。
デルタエッジコンサルタントでは、BCPに関して、
・リスク評価や優先順位の検討支援
・BCPの策定支援
・過去に作成したBCPの見直し
・既存のBCPの横展開(震災用BCPに基づく、感染症BCPの策定、等)
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