コラム

 公開日: 2015-06-24  最終更新日: 2015-07-23

中小企業におけるCIO機能の必要性

平成27年6月4日に、経済産業省が毎年取り纏めている「情報処理実態調査」の平成26年調査結果が発表されました。その中のトピックの一つとして、新しいビジネスモデルの創出やビジネス領域の拡大にITを活用している企業はおよそ2割に過ぎないことが報告されました。
一方で、経営におけるITの役割が大きくなるにつれて、CIO(Chief Information Officer、情報担当役員)の重要性や期待が大きくなりましたが、ここ最近はその話題も少なくなってきた感があります。
今回は経済産業省の調査結果をもとに、特に中小企業におけるCIOの位置付けについて確認していきます。

CIOに関する「情報処理実態調査」平成26年調査結果の概要

それでは、「情報処理実態調査」の平成26年度調査結果のうち、CIOに関する部分をピックアップして確認していきます。
まず、CIOの設置状況ですが、専任または兼任のCIOが設置されている企業は全体の3割弱に過ぎません。しかも、ここ数年は減少傾向が進んでいます。これを従業員規模で確認すると、中小企業は大企業よりCIOの設置割合が低い傾向にあります。
CIOの設置状況(H25)

次に、CIOを設置していない企業にその理由について確認したところ、そもそも「必要ない」と回答した企業の割合が全体の半数近くになっており、こちらも年々増加傾向にあります。こちらについても、従業員規模で確認すると、中小企業の方がCIOの必要性を感じていないことが分かります。一方で、人材不足やスキル不足をカバーするために外部の専門家を活用することで対応しているケースも見られます。
CIOを設置しない理由(H25)

CIO設置する中小企業について、CIOに課せられた役割を確認したところ、昨今の時勢からか、「セキュリティ管理」「リスク管理」「コンプライアンス強化」に関する役割の比率が高い結果が出ました。また、従来からIT活用に求められる「業務改革」「コスト削減」「IT投資効果の最大化」に関する役割も高い結果でした。一方で、ITを利活用した変革に関する役割は低い状況でした。
CIOの役割(H25、中小企業)

最後に、CIOの設置状況とIT投資効果について、その関連性を確認したところ、全てのIT投資効果項目に関して、「CIO未設置」よりも「CIOがいる」企業、「CIO兼任者」よりも「CIO専任者」の企業の方が、IT投資に対する効果があったという結果になっています。特に、「収益改善」、「顧客満足度の向上」に関しては、CIO専任者のいる企業は他と比べて15%以上高い数値を示しています。
CIO設置状況とIT投資効果の関連性(H25)

中小企業におけるCIOの設置パターン

企業内外における情報化の進展、インターネットの普及、ERP等の全社統合システムの導入、といった事業環境の変化を背景に、経営戦略を実現するために全社の情報システムや情報基盤を統括する役職として、大企業を中心にCIOが設置され始めたのは1980~90年代でした。
しかしながら、中小企業では人的リソースが限られており、スキルも十分でないため、一部の積極的な企業を除いては大企業の様なCIOの設置が難しい状況でした。中小企業においては、以下のパターンでCIO機能が配置されていたと考えます。
CIOの設置パターン

パターン1は、大企業と同様、単独でCIOが設置される形式です。ここでのCIOは専任、兼任両方のパターンがあります。この場合のCIOの役割とは、一般に言われる「経営とITとの橋渡し」を行うことです。
パターン2は、IT部門長がCIOとなる形式です。IT部門長が役員でない場合は、経営トップとの間に担当役員が置かれる場合もあります。このパターンでのCIO=IT部門長は、社内情報化を推進してきた経歴を持つことが多く、技術面での知識や経験は十分にある一方で、経営視点での能力は未知数であり、社内システムやIT基盤の安定運用に追われてしまうあまり、積極的な経営視点でのIT利活用の提案が難しいことが多いと考えられます。
パターン3は、レアケースではありますが、経営トップ自らCIOの役割を担う形式です。中小企業の持ち味である、意思決定や実行の速さが最も体現できる一方、経営トップの負荷が高くなり、また、その意思決定をチェックする機能に欠けてしまうという課題もあります。

中小企業のCIO機能について

上記に提示したパターンについて、それぞれ長所、短所があり、どれが正解ということはありません。CIO機能の担当者をどこに配置するかということなので、ここでは、CIO機能として担当者に求められる要件を提示することにします。
CIOとして一般に求められることは、経営戦略に基づく社内IT戦略の策定です。ここで重要なのが、「経営戦略に基づく」の部分です。IT部門でキャリアを積んできたCIOにありがちなのが、技術的な側面に目が行きがちになってしまうことです。例えば、業務効率化を目的とする情報化施策について、技術は最高水準でも、その導入コストや運用コストが予想される効率化の範囲を上回ってしまったり、システム化範囲外の業務負荷が高くなったりする場合は、当然、経営的には承認することができません。そもそもそんな計画を策定するCIOはどうなのか、ということになります。一方で近年ではセキュリティ事故が多発していますが、これを防ぐためのセキュリティツール導入やサーバーやPCのOS更改の際に、発生する多額のコストの妥当性を経営的観点で説明できることが求められます。
つまり、CIOは経営管理に関する知識や経験が不可欠です。IT戦略を策定する際には、技術的観点だけでなく、経営的観点も含める必要があります。同時に、自社の置かれている事業環境や業界知識が必要となります。最低限、自社の事業内容や業務プロセスは理解する必要があるでしょう。もちろん、ITについても、毎日の様に発表される新技術やコンセプトをある程度理解できることが必要です。それ以外にも、他社に対する説明責任を果たすためのコミュニケーション能力や統合的なリスク管理能力も求められます。
こうした知識・スキルや経験は、IT部門の中にいるだけでは獲得することが難しいものであり、IT部門長がCIOを兼任する場合は留意する必要があります。

CIO機能を外部に求めるという選択肢

現状、中小企業におけるCIOがその役割を十分に果たしているケースは少数派だと考えます。それ故に、経済産業省の調査結果で「CIOは必要ない」という回答が多数になっていると考えます。
しかしながら、企業を成長させるため、あるいは情報セキュリティ上の脅威に対処するため、企業におけるITの果たす役割は今後も大きくなっていくことが予想されます。こうした役割を担うCIOを育成していくには、IT部門担当者にもそのキャリアにふさわしい経営知識や業務知識を身に着けてもらう必要があり、ジョブローテーションやキャリアパスについて考えなければならないでしょう。逆に、事業部門の担当者がIT部門に異動してキャリアを積むという道もあると考えます。
とはいえ、人材の育成には長い時間が必要であり、特にリソースに限りがある中小企業のほとんどが、そこまでの余裕が無いと考えます。外部から人材を招聘するという手段もありますが、フルタイムのCIOがどこまで必要か、疑問視する中小企業も多いと考えます。
その様な状況を改善する方策の一つとして、経済産業省の調査結果にあるように、外部の専門家を活用してCIO機能をカバーするという考え方があります。あくまでも外部の者なので、最終的なジャッジは社内の然るべき役員や経営者が行わなくてはなりませんが(以前、クライアントの相応の立場の方から「決めて下さい」と言われたことがあり、そのときはさすがに困りましたが)、特にIT部門が日常の業務に追われがちで余裕が無い場合、外部の専門家にCIO機能の一部を対応させることは選択肢の一つとして有効です。また、その外部専門家に自社のIT担当者をサポートさせることで、そのIT担当者へのスキル移転も可能となり、将来の企業を担う人材にもなり得るのでは、と考えます。

参考
経済産業省、情報処理実態調査 平成26年調査関係資料

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