コラム

2016-04-11

工賃向上の「軸足」:就労継続事業の使命

障害者就労継続B型事業の工賃向上支援をさせていただいて、早や8年になります。
1~数回といった短い研修などもありますが、集合研修と個別支援を組み合わせた年間の支援では延べ80施設を支援させていただいています。その中で、経営者や就労事業担当者からよく聞くお悩みは

・売れているのに工賃が出ない。
・単価が安い仕事しかこない。
・忙しくて営業にまわれない。
・全然売れない。
・どうやって営業をしたらいいのかわからない。
・職員の考え方がバラバラ。
・何を作ったらいいか分からない。      

などなどです。
みなさんにも心当たりはありませんか?

お悩みはどれも大切なことですが、一つ一つの「困ったこと」に対して反応をするのは得策ではありません。
諸々あるお悩みの根っこにあるのは

「工賃や就労事業に関する意識や理解の問題」
「売上と利益の関係を表す就労会計の理解の問題」
「就労事業をどう組み立てて推進するかという経営管理やマーケティングの問題」

に集約されると思います。
つまりこれらの「根っこ」=「軸足」をしっかりすることで、就労事業が回り、工賃向上という良い循環が作れることになります。

さて3つの軸足の中で一番先に考え、もっとも重要な軸足は何でしょうか?
それは、「障害者就労継続事業の果たすべき役割を明確にすること」です。

行政などの説明では
「就労継続支援A型事業は雇用契約に基づく働く場を提供し、最低賃金以上を支払える事業内容を作り、賃金だけではく福祉的生活支援を行うこと」
「就労継続支援B型事業は雇用契約に基づかないが働く場を提供し、より高い工賃を支払える事業内容を作り、工賃だけでなく福祉的生活支援をすること」
とあります。

確かにこの通りなのですが、この説明を諳んじることができるからといって、事業所の中で果たすべき役割が明確化されているとは限りません。上記に説明された内容が事業所の行動で表現されているかどうがが、「果たすべき役割が明確化されているかどうか」を測る一つの指標だと思います。

次の事例を考えてみてください。これらは就労継続支援B型の使命に合致しているでしょうか?

事例1
1個0.8円の内職の仕事。利用者だけでは納期に間に合わない。利用者が帰ったあと職員が残業をして作業している。内職が主たる就労事業で、この状態は何年も続いている。

事例2
雑貨を作っているが、売れるには良いデザインが必要。地元のデザイナーが協力しておしゃれな雑貨にできた。しかし指定された材料は高く、利益がほとんど残らない。制作もデザイン性重視のためストレスがかかる。こんなに苦労しているので思ったほど売れない。利用者にも職員にも辛い仕事になってきている。

どちらの事例も経営者も職員も就労継続支援として一生懸命頑張っているのです。
しかし行動による結果は、その頑張りを残念ながら反映してません。
思いと行動に「ズレ」が生じているようです。

「ズレ」はどうしても生じてしまうものですが、思いを形にするためには、そのズレをできるだけ少なくしたいものです。
そのために最初にやるべきことは、「かけ違い」を避けることです。同じ言葉を違う意味で使っていたということもあれば、総論賛成・各論反対という場合もあります。「かけ違い」を避けるために、就労継続支援に関して、下記の問に答える形で自分たちの言葉で説明をしてみては、どうでしょうか?

・障がいのある人の自立した生活とは、どのようなことでしょうか?
・利用者はあなたの事業所に何を求めて来ているのでしょうか?
・就労継続支援事業所は事業所として何をしなければならないのでしょうか?

同じ事業所の他の職員と話し合い、また同じ事業の別の事業所の職員と意見交換をすることで、さらに理解が深まり、「障害者就労の果たすべき役割を明確化する」という強い軸足が生まれることと思います。この強い軸足を持つことで、行動による結果のズレ(思いと行動の違い)を修正することができると思います。

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